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思い出

息抜きに たわいもない話を

息抜きに たわいのない話を

町は昼間の喧騒が収まって夜のとばりを迎えていた。
私は中心街の名曲喫茶へ待ち合わせの為向かっていた。

港町はネオンが灯り始めて夜の姿を見せ始めていた、
T商店街の入り口に差し掛かるとスーパーマーケットの
陰から怒号が飛び交った。

建物右側に目をやるとシャッターの閉まった前に3人の
若い男の姿が見えた。
その内二人は知っている顔、ひとりは知らない顔だった。

その町では名の知れた私と同年輩のK兄が見知らぬ男に
殴りかかっていた、

それを自動車修理工場に勤めているFさんが止めている、
ちょうどその場面を目撃したのである、Kにとってそれは
都合の悪い場面だったのである、のちに理由が判明する。

遠慮せずに説明すると、チンピラ達の憧れの的、町の顔役
Kにしては何ともお粗末な? 幼稚と言った方が良いのか?
迫力のない喧嘩だった、まるでシャモ同士の喧嘩である。

皮肉にも、その殴りかかる場面で彼らが私に気がついた、
お互いの目がバッチリ合ってしまった、何ともバツが悪い、
ところが、ここで私の悪い癖が出てしまった ?

ゆっくり流れるスローモーションの世界だったもので・・・
自然に頬が緩んでしまった、笑みがこぼれたのである。

K兄 ムッとしたことは言うまでもない、しかし、Fさんの
仲裁を受け入れて事なきを得たようだった。
その場を離れた私は50mに近づいた名曲喫茶に向かった。

何とも幼稚な喧嘩である、地元だからそれで通用するが、
後、私が転居した松山だったら命がいくら有っても足りない、
良き時代の田舎町と言うべきところであろうか ?

さすがに、恥ずかしい所を見られたK兄、後日、私と会う度に
粋がって見せたが、K大空手道部出身住職Fから私の事を聞き
及んで鉾を納めてくれた。

のどかで風流な時代の港町、チンピラが闊歩した無法地帯、
しかし、どこか憎めない哀愁の漂う九州は別府航路の玄関口。

私の生まれ育った故郷はそんな無邪気な若者達で賑わっていた。
空手に汗をかいた者から見れば笑って過ごせる港町、Y市。

私の空手友達が言った言葉を思い出した、
「Sさん、好きなだけ殴らせたらいい、その合間に一発殴って
決めればいいんよ !?」 まさにその通りである。

野球の神様 巨人にV9をもたらした川上哲治監督は現役の頃
相手投手のボ-ルが止まって見えたそうであるが ?
男同士の喧嘩でも言える、突き蹴りがゆっくりと舞うように見える !

奥ゆかしさの中に達人達の凄さを実感する、それは人間業を超越
した世界なのである。

芦原会館初代館長 芦原英幸館長 初期の頃の港町の出来事である。

息抜きに たわいもない話を” に2件のコメントがあります

  1.  杉の子兄殿

     他人の争う声を聞きましたら、私はその道を避け、震えながら帰路を急ぎます。
    学生の頃、生意気だった私は、下宿の近所のバーで、四人の男に絡まれたことがありました。彼らは普通の会社員でしたが、体が大きくて腕に自信がありそうでした。何でそうなったのか、今でも覚えておりません。

     会社員の中の一人は、私と同じ店の馴染み客でしたから、おとなしいマスターは驚いているだけで、身を硬くしておりました。
    その時、店の奥にいた知らない男性が、立ち上がって言いました。「若い者一人に、大きな男が四人もかかるのかい。」「この喧嘩は、俺が買う。」そう言って彼は、私の耳元で囁きました。「坊ちゃん、ちょっと待っていなさい。大丈夫だから。」

     カウンターで私が小さくなっておりますと、暫くして全員が店へ戻ってまいりました。
    「さあ、みんな、坊ちゃんに謝って、仲直りの握手だ。」会社員たちは一礼しながら、私と握手をして静かに飲みなおし、喧嘩を買ってくれた男性は、店を出てしまいました。

     ちゃんとお礼を言ったのかどうか、それさえも覚えておりません。ましていきり立った四人の会社員をどのようにして静かにさせたのか、今もって分からないままです。彼らとは、その後会ったこともありません。
    杉の子兄のブログを読むと、いつもそのことを思い出します。貴方みたいな「男」が、東京にも居たんですね。強くてもやたら大声を出さず、普段の声で喋る胆力のある人物。武道家とは、ああいう人物をいうのでしょうか。

     懐かしいけれど、今でも、恥ずかしく、身の引き締まる思い出です。不思議なことがあるものですね。

  2. onecat01さん、

    たまには息抜きにくだけた話もいいものです、あなたのご返事を拝見して何故かしら郷愁を感じてなりません、
    下宿近くのバ-でのひとこま、眼に浮かぶようです、あの時代は弱きを助ける男伊達が結構居ましたね !

    喧嘩慣れした体育会系のサラリ-マンかヤクザの兄さんか、どちらにしても男ですね、恩をきせるでもなく
    その所作にロマンがある、しびれますね、さすが東京、粋な男が居るものですね、まるでドラマのひと駒です。

    私の仲間には、結構こんな男達が居ましたよ、弱い者を痛める理不尽に向っていく、わたしも先輩たちのそんな
    後ろ姿に憧れたものです。

    叩きのめして正面から押さえ込む者、言葉でやんわり諌める者、それぞれの個性ある所作は男の世界の花でしたよ。
    私は、今過去を振り返ってみて、勉強、仕事だけの生真面目な人生よりも、怪我をすることがあっても一度や
    二度の喧嘩沙汰を経験した方が人生に潤いがあって良いと思います、振り返る胸の疼き、いいじゃぁないですか!

    尖閣波高し、従軍慰安婦捏造のゆがみ、外国との関係は正直者が馬鹿を見る、自己主張を心がける未来が必要です。

    この「息抜きに たわいのない話を」何故、私は喧嘩を止めなかったか? その理由はこのようなことなのです、
    主人公Kの性格を良く知っていること、どこまでやれる男かその程度が判っていること、仲裁人Fは松山から来た
    職人で、彼の実力を知っていたこと、そういうところで大げさにならないのがわかっていた、だったら殴られる男
    のためにも人生勉強である、少しは痛い目に合えば以降、肩を怒らせることもない、Kも無茶な男ではない。

    私が仲裁するほどの喧嘩には為り得ない、だから勝手にやらせたのです、自己責任ですね。そのKの兄貴分と私は
    妙にウマが合って、その街の若い者はほとんどが周知の事実でしたからKとも仲良くなりましたが、彼は若くして
    亡くなりました。

    店を経営する私の信念
    徹底的に頭を下げる、
    無言のうちに相手を諌める、
    粋がらない、
    お客様第一、お客様の身を守る、

    あなたの行った下宿近くのバ-のマスタ-「身を盾に仲裁しないと駄目ですよ?せめて110番しなくっちゃ!」
    それとも、あなたを助けてくれた男性は、その筋の人だったかもしれませんね、だから警察を呼ばなくても
    良かった、その言葉遣い、立ち振る舞いにヤクザの粋が見て取れる、喧嘩慣れしている人だったのでしょうね。

    onecat01さん、たまには息抜きのしゃれ話もいいものです、失礼しました。「焼酎割で行きますか、ピ-ナツで」

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