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日常生活

母と子 黒ちゃん

母と子 黒ちゃん  

私がいつも通る橋がある、いつの季節だったであろうか、黒い母と子の野良犬を見かけるようになった。

ところがしばらくすると2匹ともに後ろ足を引きずるようになった、その地域は地元では名士の人なのに棒で犬を叩くと言う風評が立つようになった。

見たところ棍棒で叩かれたのか又は卑劣な針金でやられたのかとにかくひどい虐待にあったに違いないと思われた。

足を引きずると言うことは数少ない恵みの餌にさえ有り付けないと言うことなのである、私の動物愛護の精神が更にめざめることになる。

暫くしての大雨の日、橋の袂からくぐもったような犬の鳴き声が聞こえてきた、それは大きな土管、水路に閉じ込められたような水路の壁に響く泣き声だった、

紐に縛られて脱出できない悲痛なもののように感じられたので私は必死に橋の下の大きな水路その他に目を凝らしたが発見することは出来なかった。

勘違いであれば良いのだが、この近辺の住民に私は言い知れぬ不信感がある、それ以来足を怪我した母犬の姿が消えた、水路に閉じ込められた哀れな犬の叫びだったと私は後悔に苛まれることになる。

動物に対する住民の対応、残念だがこの地域に対する私の愛情は失墜した、弱きものに対する住民感情は儚さ過ぎる。

母親を失った子犬の日々は、悲しいものだったに違いない、餌にありつけないひもじさは涙無くしては語れない、私は人目を忍んで子犬が 潜むであろう草むらに食事を届けた。

月日は四季の彩りを見せて暦をめくる、その場所から下流のある地点に3~4匹の犬たちが人間を避けるように姿を見せるようになった、黒ちゃんと名付けた豆柴がその仲間にいた。

他の犬より数歩下がって私の姿を追っている、吠えた事など一度もない、いつの頃からか私は「黒ちゃん!」と呼びかけるようになった。

共に足を怪我した母と子、その時目にした餌を届ける人間を覚えているかどうか? 物言わぬ黒は何思うだろうか ?

ところが数日前の午後7時ごろ、いつもの土手で私は車を止めた、メールのチェック、西方から眩しいライトが迫って来たが速度はゆっくりである、

20メートル程に近づいた時、「ゴーン!」 直後「ワーン!」・・・犬が轢かれた ( 直感!) しかし、普通車はそのまま通り過ぎた。

急いで懐中電灯を照らすも犬の姿はない、100m四方捜したがいつもの仲間2匹は吠えていたが黒は出て来なかった、(黒がはねられたに違いない?)

その夜は冷たい雨が朝まで降り続いた。

2日目3日目、その場所に犬たちは出て来なかった、ところが3日目の午後9時ごろ、彼らがいつも佇むある場所に車を止めて目を凝らした、微かに黒い物が動いた、(黒だ!)  「黒ちゃん!」私の呼びかけに「ワンワン!」 黒の鳴き声が響いた !

黒ちゃんの喜びの合図だったのではないか !  込み上げるものを私は抑えた。

私の推論

後足の不自由な黒が道路を横切ろうとした時、車が車止めに衝突した、だから硬い物に当たった音だったのである「ワン!」は、それに驚いた黒の驚いた声だったのではないか ?

「黒ちゃん!良かったね!いつもの日常が続く、また逢えるね  ! お母さんがきっと守ってくれたんだよ !」

母と子   黒ちゃん   !?

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