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思い出

人は見かけによらない

男とは切ないもの、悲しい生きもの、人前で笑顔を見せひとり部屋で思い出に涙する、哀しみを我が胸に押し込めて笑顔を見せる、汝は男 !

こんなに長く生きていると人間の裏表がよく見える、強いはずの男が案外もろく、逆に弱いと思っていた男が案外しぶといところがある。

見かけで判断しないこと、その良い例が学生時代のある場面、

目立たない控えめな学生に番長グループの使い走りがちょっかいを出した。

やめとけば良いのに、相手がおとなしいものだから図に乗って怒鳴り上げながらパンチをくり出した、ところがそのパンチが空を切ったのである、殴った方は予想外の事態にカッコがつかない、

顔を真っ赤にして更に2発目、これも見事に空振りする、3発目を出した瞬間、目にも止まらぬ早さでボデーを食らった。

息が止まったのか、苦痛に転げ回る、おとなしい筈の学生は黙って教室を出て行った、番長達は呆然と見送るばかりだった、虚をつかれたのである。

まさかおとなしいと思っていた学生が俊敏な動きをするとは  ?翌日何もしない訳にいかない番長がその学生を何処かへ連れて行った。

帰って来たのはその学生だけ、その時校舎裏の学内花壇から女生徒の悲鳴が上がった、1人の男子生徒が空を見上げて気絶していたのである。

人は見かけによらない、弱いはずの生徒は私の友達、ともに日頃は番長グループを避けていた。

ある時、番長達は学校の住宅街西の一角のパン屋へ向かって歩いていた、

授業が終わって下校時である、ひとりの学生が白い道着を担いで足早に港湾の方へ歩いているのが目に入った、弱いはずの生徒だった。

古い木造二階建て、倉庫を改造したような建物に彼の姿は消えた、「◯◯流空手道場」

番長達はお互いに顔を見合わせて足早に踵を返した、荒れた校風から嵐が次第に去って行った、平穏を取り戻した校舎に授業開始のベルが鳴った。

「人は見かけによらない !」

昭和が未来に向かって輝いた時代の一コマである          !?

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