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思い出

ある男のひとり言

ある男のひとり言

「Sさん!おんなの涙、読んだよ!そうだねおんなの涙分かる気がしてきたよ、Sさんもおふくろさんかい  ?」

彼はそう言うと涙声になった、親が元気な内は心配かけて亡くなると恋しくなる、男は強がりを言うが母には弱い。

昭和の女は強かった、そして優しかった、子殺しなど皆無、それどころか子供のために自分の身を犠牲にした、今になるとそんな昭和が懐かしい。

その上私と彼の思いが一致するのは、昭和天皇陛下の存在である、陛下を想うことで生きる勇気が湧いてきた、安心感と言えば良いのか苦難を乗り越える精神的支柱そのものだった。

その昭和も随分遠ざかってしまったが、私たちの年代は哀愁を伴った懐かしい思い出として胸にしまっている。

「昭和も遠くなりにけり   !」

そして彼は続けた・・・

それと消えない悔いが、泣かせたまま別れた女性との思い出だった   ?

彼女の安月給に甘えて、何もしてやれなかった己の身勝手さ、「コートの1つ買ってやればよかった、思う存分笑わせてやりたかった、何にもしてやれなかったもんな   !」

自嘲めいて彼の語尾は消えた、「みんな同じだよ ! そう気にすんな  ?」私は我が身と重ねて呟いた。

彼に新しい彼女ができたことで、彼女は自ら身を引いた、木枯らしの吹く寒い夜だった、国鉄Y駅のプラットホームに涙を枯らした女が立っていた。

叔母の住む松山へと彼女は向かったのである、あれから数十年彼の悔恨だけが虚しく響く、現在に至るも彼女の消息は掴めない。

泣かせたままで終わった恋、彼の懺悔を聞く私は彼以上の後悔に苛まれている、「俺も同じだよ!お前以上にひどかった  !」

昭和が平成に代わり、令和になっても男女の恋は変わらない、泣くのは女、しかし強いのも女、バカを見るのはみな男、後悔だけが残る。

世の中がコロナウイルスで翻弄される、人間なんて弱いもの、そして儚いもの、いがみ合う国同士に地球が悲鳴をあげる、今こそ、リーダーの資質が問われる時代はない。

「おんなの涙」友の懺悔を聞いて私の胸は痛んだ   !

何もしてやれなかった !  辛い胸の内を判ってやれなかった、

梅雨空から落ちる雨は涙雨   ☂️    何処の空の下にいるのやら。

終わってから知る恋の苦味、   男って奴は切ない生きもの         !?

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