祭囃子と秋祭り
賑やかな音楽と人の声が段々と大きくなって来た、
窓を開けて重信側に掛かる橋の袂に目をやると大勢の地区民が
子供連れで橋の上に群がっていた。
晴天に恵まれた「おらが村の秋祭り」最高潮の瞬間がおと連れよう
としていた。
川を挟んで両岸の村の御神輿が、橋の上の真ん中で鉢合わせをする
のである。
愛犬CCを連れて土手に出る、隣のAさんが橋を見ながらタバコを
くゆらせていた。
もうすぐ「もってこい! の掛け声がしますよ」 と笑顔を見せた、
「良い天気になりましたね」大人の会話をCCが眩しそうに見上た、
太陽が眩しいほどに青空が広がっている。
やがて、橋は二つの神輿がぶつかる、沢山の見物客から声が挙がる
「もてこい!」男衆に混じって子供達の声と女性達の嬌声が続く。
私の耳には「もて乞い! 持って恋! 盛って来い!」と聞こえて
来るようだ、「おらが村の秋祭り」そこには戦争の足音はない、
普段どおりの普通の庶民の暮らしが顔を見せているだけである。
先般の台風18号の爪跡と云えるのが、重信川中洲に生い茂っていた
樹木が濁流になぎ倒されて、平らな大地に姿を変えた事である。
彷徨ってねぐらにしていた野良犬達が何匹か犠牲になったことだろう、
逃げ出して助かった犬もいただろうが中州にいて濁流にのまれた犬も
いた筈である、自然の猛威の前に生き物達は生き永らえる術はない。
祭囃子と秋祭り、弐体の御輿の鉢合わせ、通り過ぎた静寂の後に
戦争の槌音が聞こえて来たのは私だけだろうか ?
先制攻撃を決断と、ネットが騒いでいる、どちらが先制攻撃なのか ?
相撲の世界と違って世界を股に駆けた大勝負に行事役はいないようだ。
先程通り過ぎた祭りの喜びの声が見納めになる悲しい幕引きは御免だ!
晴れ渡った青空の元、遠くで野良犬の鳴き声がする。
「もっと生きたい! 生かせて!」