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男と女

乙女の笑顔  天使の微笑み

乙女の笑顔  天使の微笑み
別の項で述べてみたいと思っていた女の表情について、
いつ見ても淋しげに悲しそうに眉を寄せる女性がいた。

その物憂げな表情の中に、育って来た環境と今が見える、
遠くからそっと眺めるだけで話したことはなかったが、
ついに、その機会がおとづれたのである。

初めは、不審そうに警戒していたが、私の素性と理由が
分かると一転安堵の表情を見せ、無邪気な笑顔を見せた。

まるで、汚れのない童女が、自分の両親に見せる天使の
笑みだった、その落差に驚くとともに、その極端な原因
を知りたくなったのである。

両親と兄弟、家計を助ける為化粧も控えた健気な乙女だった、そんな彼女が恋をした、相手は勤める商家の長男坊 !

しかし、その恋は彼女の一人相撲で幕を閉じた。

その頃は今と違って古風な習慣が残されていた時代、身分
不相応を彼女なりに理解したのである。

小さな胸に収まるには彼女を取り巻く環境は余りにも多くの
問題を抱えていた、

親思い、兄弟思い、その責任感が自然に顔に出ていた、本来は私に見せた笑顔のように聡明な女性なのである、

昼間は商店で真面目に勤め、夜は疲れから来る睡魔と闘いながら夜間の定時制高校を無事卒業した、「蛍の光」をどのような思いで口に出して唄ったのであろうか ?

寂しそうに哀しそうに、私を見上げた乙女は、今、関東の地で幸せな家庭を築いている、男と女の友情は難しいと言われるが理性を抑えることで可能となる、私に限っては。

だから、その自負の裏で、「意気地なし !」 乙女の独白が私の元に届くことはなかった、「ほっ !」

彼女から見れば私は異性ではなく兄のような存在だったのである。

粋がる正義感を持つと男は損をする、目の前に咲くバラの花さえ掴むことができない、据え膳食わぬは男の恥、恥晒しの人生、それは我 ?

恋は盲目、男の一人舞台  ?
踏み込めない勇気のなさが実る恋も遠ざける、そんな男がひとり、私の周りにいる、まるで私の若い頃の恋愛道を歩んでいるように ?

モテる男が女を独占して、もてない奴は、いつまでも膝小僧を抱える ?

「どうにかしてやらんと !」  私の独り言が空虚に響く !

雨上がりの日曜日、青空を見せて雨雲が北へ向かっていた。

 

 

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