一仕事やり終えた、やりがいのある仕事である、昨夜も遅くまでパソコンとにらめっこ、疲れも苦にならない充実感、夢の世界へスッと入った。

役所の担当者と世間話、その余裕がこれから生きる、年寄りに嫌われ、年寄りを粗末にする者はいつかは後悔する。

年寄りは伊達に歳を食っていない、たくさんの人と出会い、たくさんの知己がある、それらが君を後押しする。

先般は申請手続きを頼まれた企業と社長をお訪ねしてその懐の大きさに感激したものだが、後日それとは逆にいささか不遜な相手に出会う事になった。

電話での初対面だが礼儀作法の何たるかを知らない、義理の父母の心遣いと愛情を履き違えた若者だった。

私は初回で相手の性格を見抜く、悪い者は悪いなりにやりようはあるが、やはり常識を弁えた方がどれだけ徳か、だんだんと身をもって分かって来る。

若者を見れば育てた父母の姿が見えて来る、その逆に親を見れば、彼や彼女が育てた息子の輪郭が浮かび上がる。

結婚問題にそれらは顕著に現れる、結婚する前と後では雲泥の差、全く予想もしなかった非常識な妻が目の前にいる。

これなど妻の両親を見れば一目瞭然です、気のつくのが遅すぎた、人生はこんなものです、できた親には出来た娘が育つ   ！

まあ！  いろいろありますよ   ？

自分で生きていけるなら本能のままで行けば良い   ！その代わり人の助けは得られない、独立独歩で行きなはれ  ！

近道ではないが、山あり谷あり奈落の谷底が口を開けている、難儀して乗り越えた者は強い、次の難所も難なく乗り越えられる ！

年寄りに優しい者はそのお年寄りに助けられる、私の場合がそうだった、地方の金融関係で勝ち組に登りつめた大先輩がいる、陰に陽に目をかけられて励まして頂いた。

普通なら目もかけられない落第生、先輩への礼儀作法と謙虚さだけで認めてもらったのである、私は相手が良い時は押し掛けない、逆に控えて遠慮する  ！

周囲にいる知人たちとは真逆である、先輩の寂しい晩年にお声を！かける、これが先輩の弧線に触れた、何かある度にＳ君とお声がかかるのである。

意識せず、無意識の善意、これが先輩から引き立てられる極意だった。

息子さんが経営している医療法人が繁盛している、その駐車場の片隅で先輩は息子の為に小さなスコップを手に草引きをされている、親の愛情がそうさせるのである。

私は通院すると必ずお声をかけて挨拶する、遠い昔を懐かしみ同郷人の行く末を心配する先輩を見て、忍び寄る黄昏を感じながら一抹の寂しさに別れを予感する。

「コロナが治ったら皆んなで食事会をしましょう、連絡しますから元気でいて下さい    ！」

医療法人、銀行の牽引役、娘の長男は白い巨塔のリーダー陣に

名を連ねる、立派に教育をやり遂げた先輩の後ろ姿を見送って私は帰途についた。

黄昏を迎えた大先輩   ！

今日の私があるのは、このような先輩始め友人知人たちのお陰なのである。

人との出逢いに感謝  ！  その優しさを見習う事に尽きる   ！自分を啓蒙する為に何が大切か、人の足跡を見よ   ！

親切は押し売りにあらず、自然の発露なのである。

コロナを忘れさせてくれる青空に、私はひとつ約束した、先ほどの身の程しらぬ若者を礼儀作法を弁えた人間にする、

お天道様との約束である。

「押忍」