故郷の友より地酒が届いた、
「旨い酒だから飲んで」 勿論知っている酒蔵の酒、
舌なめずりしているところである。
(だが待てよ、こんな旨い酒一人で飲むのはもったいない)
というわけで、ある人に一本おすそ分けすることにした。
早速、連絡して届ける約束になった、
ちょうど、仕事の打ち合わせで街に出て行く予定、
喫茶店での待ち合わせとなった。
私は、貰うより人にあげたい人、
出来るなら沢山の人に飲んでもらいたいが、そうも行かぬ、
独断専行にて候補者を決めた次第、洩れた人は悪しからず。
夜、雨の音を聞きながら飲む酒もおつなもの、つまみは
愛妻に造ってもらってください。
友の内、何人か定年退職を迎えた・・・
ところが、多忙ゆえ今だ退職祝いをしていない、
そろそろ落ち着いてきたので連絡して酒席を用意したい。
繁盛している居酒屋が、店主の健康問題のため店を閉じる、
その相談を受けたばかりで、同業者に打診しているが、
その街では一番の繁華街、週末ともなれば多くの飲み客で
賑わう通りに面している。
人間の運は、まず健康、その後に金が付いて来る、この世に
金の要らない人は居ないと思うが、1人だけ奇特な男が居る、
Sさん、金はもう要らんよ ! 私の可愛い後輩である、
お寺の〇男坊、一流企業において珍しい生き方を貫いた男、
会社を定年退職して悠々自適の生活を送っている。
終の棲家の関東と故郷を行ったり来たり、
彼のささやかな夢は、ボ-トを購入してのんびりとつり三昧、
Sさん、招待してあげるよ、一緒に遊ぼう !?
泣かせてくれる!
だが当たり前だぞ、彼の愛妻はこのS有っての結婚だった。
若さゆえの反対に、可愛い後輩のために一生懸命頭を下げて
頼んだ私、その熱意に答えて下さったのが彼の妻の母だった。
遠き日の思い出である。
酒はいい、良いことも悪いことも教えてくれる、
それを見極めるのは、ひとえに、お前さんだ !?