「あの野郎! 年上かと思っていたのに同級生とは知らな
かった、1ヶ月前に知ったのよ! バイト先で下手に出て
やったのに ?」
余程悔しいのか、Aは私に愚痴をこぼして続けた ?
「あの時、ワシを呼び捨てにしやがって・・・?」
私は笑って聞いていたが、相手のBとは私の竹馬の友、
Aは高校の同級生である、たわいもない事だが資産家で
地元の名士に成り上がったAにとって屈辱なのだろう ?
「ワシが二次会の飲み代全部出すからBの店に行こう !」
Aの性格を知り抜いた私は、彼の魂胆はお見通しだった、
Bはこの町で長い間飲み屋を経営している古参の経営者、
その話は遡ること大学時代のバイト先の話で後塵を拝した
悔しさがもろに出たのである。
Aは数名引き連れて一次会の居酒屋を後にしてBに向かった、
私達は別の二次会のショトバーへ向かったのである !
電話が二回入ったが適当に返事をして、敢えて私は行かな
かった、既に一次会で暴言を吐き座を白けさせていた事も
有って、一悶着を予想して避けたという事である。
私は酒飲みの仲裁は気にならない、それどころか得意な
分野だが、
さすが一次会の無礼の数々にカチンと来ていた事も有って、
行司が相撲取りになる危険があったので避けた次第である。
・・・・・
私は物心着いた頃から、すでに酒癖に悩まされていた !
それも身近な肉親だっただけに悲しみは深かった。
遠い日の思い出は、酒乱に泣く母の後ろ姿である !
幼い子供になす術はない、母を助ける事が出来ない悲しさは、
人間を悪魔に変える酒へ向かうようになる。
それは、酒に負けない男になる ! 酒に飲まれない男になる、
「酒を飲み負かす!」 男になることだった。
こうして私は酒を操る男になった、
私の何クソ魂は、そんな悲しみから生まれたのである。
悪いけれど金持ちを鼻にかける男は、私にとって睥睨せざる
相手、依りによって酒に溺れる男は男にあらず ?
竹馬の友、飲み屋のBに狼藉を働くならパンチの一つも出る
というもの、私の理性がそれを避けたのである。
酒は飲むもの愛でるもの ! 喧嘩の道具にしちゃならぬ !?