君と俺の行く道 認知村
運転免許の更新が近づいて来てその役所から通知のハガキが届いた、
更新の前に認知症の検査を受けて下さい。
彼は早速、以前高齢者講習を受けた教習所に予約を入れた。
「時計の絵を描いて、数字を書き入れ、先生の言う時間を記入するのですと、分かりますかおじいちゃん ?」
横でお世話焼きさんがそう言っている「うん!分かってる・・・」
( 簡単なことではないか ? ) 彼は黙って聞いていた。
別のことを考えていたおじいちゃんは上の空 ?後日、それが失敗の元となるのも知らないで !
( 何だって元気な俺が認知症検査なんだよ ?)日頃、何不自由のない生活の彼にすると役所の親切がお節介にしか見えないのである。
「今日は、教習所の認知症検査なんでしょう ?」
カレンダーに赤ペンで大きく印を付けている山の神が
大きめの声で彼に伝えた。
数日前から、カレンダーとにらめっこのおじいちゃん
「分かってるよ !」
勇んで家を出た、目当ての教習所は家から5分のところ。
彼を入れて男女12名のお年寄り達が待合室で待っていた、定刻の時間が来て4名の先生達の待つ教室へ通されて、お年寄り1年生の認知症教室の授業のベルが鳴った。
笑いと涙のちょちょ切れる珍問ちん解答の始まりである、
結果通知はもう少し先、おじいちゃんの思いがけない年末協奏曲が幕を開く、人生って何と面白いものか ?
明るく行こうぜ !
人生は、笑いだよ ?
福の神が手招きしてる、 「お歳暮だと思って私にも笑いの花束くれんかね」 !?