1983年10月29日 公開の映画がある、
竜二
日本の若者達に強烈な印象を残して惜しまれて亡くなった
金子正次
11月6日、映画公開期間中に胃癌生腹膜炎で俳優松田優作ら
に看取られて33歳の若さで旅立った。
それまでの任侠映画にないヤクザ映画は世の中にいて決して
恵まれない若者達を中心に語られていくことになった。
私も街の劇場に足を運んで同じ愛媛県出身者と言う親近感で
銀幕の竜二こと金子正次を凝視した、その後、彼の親族だと
言う旧知の知人とお茶をご一緒することになる。
本名、金子松夫、金子正次の生い立ち、故郷の話にのめり込んだ、
この映画「竜二」には、いろんな意味で身につまされること
になる。
永島暎子扮する竜二の妻 花城まり子に、飛ばし過ぎた青春
時代の我が姿が蘇ったのである、極道者とは無縁の私だが
すれ違った女性に永島暎子を彷彿させる女が居たのである。
後々語り継がれる、名場面がある、
家に帰ろうとした竜二はある商店街の安売りでオバちゃん達に
混じって群がるまり子の姿を見つける。
愛妻とひとり娘を見つめる竜二の目尻に涙がにじむ !
自分の帰るべき元のヤクザの道に、白いスーツ姿の竜二は舞い戻る、
音の消えた場面に喧騒が蘇る。
私がヤクザ者竜二に遥か昔の男伊達を見ると同時に、昭和の耐える女、まり子の哀しみの表情に遠ざかる昭和の残像が見えて来たのである、
男女の綾はもつれて、よじれても、離れない筈なのに ?
離れざるを得ない運命 !
涙がとめどもなく流れる女の未練を背中にする男の身勝手だけが夜道を濡らした。
永島暎子、まり子の絶妙な表情に我が青春の残影を見た !
さよならの季節、木枯らしの舞う故郷の港町、弱い女の慟哭が脳裏から消えることはない。
あの! 女と瓜二つ !
YouTubeの竜二に逢いに行くと、まり子に目が行く、幸せを
掴んだろうか ? まり子の後ろに過去の女の泣き顔が浮かぶ!
男とは哀しきものよ ! 過ぎ去って後、後悔が身を責める ‼️
竜二とまり子
萩原健一 ショーケンの唄う 「ララバイ」 に引き込まれる。
金子正次に黙祷。
慎んでご冥福をお祈り申し上げます。