雲流るる果て 青春によろしく !
理不尽な恋に幾度涙が流れたでしょうか ?
あの人が愛しい、あの人が恋しいと、夜毎の床は濡れた。
昭和から平成に代わる筋目、乙女の慟哭は続いた。
町に木枯らしが舞い、波頭に潮泡が打ち寄せていた、それからしばらくしてクリスマスイヴ、見送る人もなく彼女の姿はフエーリー船上にいた。
遠い異国、それがその時代の四国と九州、雲流れる果て、阿蘇の山並みは地響きを抑えて女を迎えてくれた。
それからの歳月はその皺に彼女の茨の道を刻印していた、忘れたい、そうしなければ耐えられない女の苦しみ、しみじみと述懐するその人は、ついに安堵の日々にいた。
終の住処は九州と四国の玄関口、フエーリー乗り場の見える港湾に在った、忘れたいのに忘れられない葛藤を乗り越えるには長い月日が必要だった、憎悪と安らぎは又、相反する心の揺れに翻弄された。
その地で巡り合った大地の男性に心許すには日々を数えたが、初めて安らぎを覚えたのもひとりの男の誠実さだった。
「Sさん!今は本当に幸せよ、良いのかと思うほどよ !」
電話口の彼女の述懐は続いた、それを聞く私は感動に震えた。
「良かった! 良かったね!」
「雲流るる果て」
映画のワンシーンではないが、世の中に悲観せず、我慢した者だけが知る、本当の安らぎ、雄大な自然の懐に彼女はいた。
人間は苦労だけがこれでもかと続かない、必死に生きる真摯な姿が、幸せの扉を押しひらく、花園へようこそ !
台風一過、青空と白い雲とのアンサンブル !
私はその時代の私自身を訪ねていた、無邪気な青春によろしく !?