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思い出

カリスマの眠る地 芦原会館初代館長 芦原英幸

「Sさんの言葉はキツイ! 胸に突き刺さる !」
司法試験を受験したことのあるAがため息交じりに呟いた、
4人で馴染みの喫茶店で談笑中だった。

私は、
過去の失敗を教訓に、できるだけ穏やかを心がけていたが
そんな言葉を聞くと、我今だ木鶏なり得ぬの感を強くする、
人間関係は難しい受け手の取り方いかんで物事が違って来る。

そのお寺の境内は午前11時を迎えようとしているのに静まり
返っていた、我々二人だけの時間が過ぎていた。

目当てのお墓のお参りを済ませて、その手前一段上の墓石に
目を向けた、春のお彼岸なので皆旬なシキビが飾られて居る、
そこだけは、匂うような花がいけられていた。

後ろの草木がきれいに手入れされて、墓石周辺も掃除が行き
届いていた、主を敬うように家族や道場生の心が込められて
いるようで、私は和やかな気持ちにさせられた。

歩み寄った私に、一瞬周囲の雑音が途絶えた、静寂は、その
主が静かに耳を済ませているように感じられた。

数葉の枯葉が落ちている、それを拾いながら私は主に、語り
かけた・・・
芦原会館初代館長芦原英幸その人である。

芦原さんも (以下敬称略) 誤解されることの多かった人である、
彼をよく知る市井の人々にとっては礼儀をわきまえた紳士。

ところが他の空手家から見ると傲慢な男として捉えられる、
接する相手に依って人間観察が違って来る、仕方がないのか ?

ダカラ誤解される! 八幡浜の地におりて貧乏暮らしを余儀無く
された彼にとって無欲な私は敵ではなかった、二人の間では ?

しかし、私には他の空手家の友がいる、その地に馴染んで来る程
に彼にとってジレンマが出て来たとしても不思議ではなかった。

私の私生活、仕事の関係で次第に疎遠になって行った、
それでも彼の弟子、門下生は私の店によく顔を出してくれた。

外の人間に見えない芦原の個性に音を上げる弟子達の愚痴を私は
聞いてあげた、「頑張れよ!」 と。

私の知る限り芦原は、権謀術数のできない直情径行型、だから
なおさら誤解された、要領良く立ち回ることができなかった、
組織の枠から外れて行く損な人だったと思う。

「Sさんの言葉はキツイ、胸に突き刺さる!」
これを聞いた時、在りし日の好漢 芦原の勇姿が浮かんだのである。

( そうか? お互い悪気は無い、正直故言葉を選ばない、嘘をつけ
ない、だから相手にキツく聞こえるのだ ?)
そう思えるようになったのは、芦原が亡くなってからである。

空手のカリスマ、空手界の異端児、いやサバキ空手の生みの親、
芦原英幸 芦原会館初代館長 その偉業はどんなに称えても褒め
過ぎることはない。

彼の眠る安城寺墓地は、穏やかな春のお彼岸の最中にあった、
手を合わせて立ち上がる私に墓石の後ろの草木の葉が、音もなく
揺れた。

墓地真下を走る車両の群れが、一斉に目に留まった、騒音が耳を
つんざくように入って来た。

彼の霊前にひざまずくと、不思議なことに素になれる。

強気の中に潜む寂しさを思っていた、見方によって評価の分かれる
空手家だったが、ふっと見せた陰りに彼の内面が現れていた。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

ひとり八幡様周辺を走る道着姿の芦原の勇姿が笑ったように思えた。
押忍

カリスマの眠る地 芦原会館初代館長 芦原英幸” に4件のコメントがあります

  1.  杉の子道場には、
    いつも引き締まった空気が漂っています。背筋を伸ばしてしか入れない場所です。
    そういう場所が、私の周りから消えて、どのくらいの時が経ったのでしょう。時々あなたが描かれる空手に携わる方たちの姿に、私は心を惹かされます。女性も空手の優れ者がおられますが、私にはやはり武道は男のものという先入観があります。

     あなたが語られる芦原氏についても、男の中の男だと信じてやみません。
    今は亡き芦原氏の道着姿が、目に浮かびます。強き者も、いつかは生を終え、静かな眠りにつきます。強かっただけに、強烈な印象を残し、生あるものの哀れさを知らしめます。語り部としての貴方に、静かな敬意を払います。静寂のなかで、貴方と二人、黙って正座する姿を思い描いたりします。言葉も不要、凛として、貴方が黙想される。その姿に、日本人の心を見るような、そんな気持ちです。

     まとまりのない、コメントとなりましたが、ご容赦ください。

  2. onecat01さん、
    このブログに対するあなたのコメントほど嬉しいことは有りません。
    凛としての男の佇まいほど美しいものはありません、政治の世界の不毛な論争等を見るに付け日本男子の
    劣化を嘆かずにはおられません、大きな志も欲得の前で萎んでしまう、日本の国の悲しい現実を憂います。

    だから私は男同士の凛とした佇まいを懐かしみ、勇気を貰うため過去に向うのです、そこには武道家同士の
    切磋琢磨がありました、汗と涙と血しぶきと! 私の背骨に植え付けられた支柱が揺ぎ無く伸びています。

    芦原氏を一言で述べることは難しい、いろんな要素を持った武道家でした、私と彼は、彼がクロ-ズアップ
    される前に知り合いました、芦原氏22歳の頃のことです、極真会館(大山道場)に興味のある人は知っていた
    名前でしたでしょうが、世間的には無名の人ではなかったかと思います。一言で言えば野獣の目を持った男。

    個性の強い人でしたね、ある面では純情な人でした、言葉を控えますが青春には付きものの 事等も ?
    個性の強い者同士 気まずい別れが来たかもしれません。彼の全盛期に離れたことが良かったと思います。

    沖縄空手と違った空手家でした、良い悪いの評価は空手を志す人や後世に譲るとして、興味の尽きない人でした。
    短気にはやるだけでなく、グッと我慢出来る男でもありました。道場生にとってこれ以上のカリスマはない。

    たまに、男の佇まいを偲ぶのも良いものです、コメント有難うございました。

  3. 杉の子さん、遅くなりましたがお誕生日おめでとうございます。

    サマンサって誰?と言われそうですが、コスモスさんのご紹介で時々読ませていただいています。

    いつも皆さん丁寧にブログを書かれていて本当に素晴らしいと感心しています。

    私などサボってばかりで気が向いた時しか書いていません。

    これからも時々寄らせて下さい。

  4. サマンサさん、
    はじめまして、そして有難うございます。

    私の憧れの女性がラブレタ-・コスモスさん、深水さんと輪になって励ましあっています。
    そのコスモスさんからサマンサさんをご紹介いただいて時々あなた様のブログへお邪魔しています。

    生来の照れ屋ですのでコメントは控えておりました、サマンサさん私の竹馬の友が福岡県太宰府市
    で会社勤めを終えて静かに余生を送っています。

    日本古来の弓道、私の周りにもその道を追い求める人達が居ます、精神統一に最も適した武道です。
    私の青春は武道家との交友抜きには語れません、私の背骨を作ってくれた大切な師匠達でもあります。

    花が好きなのに花の名前がわからない無精者、しかし、コスモスさん、深水さん、レオさんたちに
    影響を受けて花を愛でる純情者です。

    サマンサさん、ピンクの川津桜? 可愛いですね、沢山飛び回るメジロさん、その情景が浮かぶようです、
    最後になりましたが、いささか球技には疎い私ですが、私以外家族はサッカ-の大ファン、詳しいですよ。

    私の誕生日を彩る何よりのプレゼントでした、有り難く頂戴いたします、いつでもお越しくださいませ。
    「サマンサばぁばのサッカ-と読書の日々」私は隠居のばぁばっ子 この言葉に弱い。有難うございました。

    ラブレタ-・コスモスさんとの友情、大切になさってください。 感謝。

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