その時、私はトイレに座っていた、
雨の音を聴きながら至福の時間を過ごしていた。
携帯が鳴った、
「Sさんですか?」
少し言葉の調子が変だなと思いながら挨拶を返した。
近くの村落に住んでいるYさんだった。
しばらくお逢いしていない ?
その間に脳梗塞を患われたようである。
「大丈夫ですか ?」
用件はこうだった・・・
自分の健康さえおぼつかないのに、隣のNさんの
悩み事を心配されていたのである。
それは、相続がらみで、以前相談があって
出向いたことが有る、その時は事情で手続きを
されず、後回しにされたのであった。
Yさんの言葉は、たどたどしい ?
本人は一度として自慢話をされたことはないが
他の方の話を聞くと、一流企業で管理職まで務めた
人のようで、穏やかな静の人である。
息子さんの家をどうするか相談を受けたのが最初の
出会いだった、
Yさんが建築してやろうとした広い土地は息子が
気に入らないとこぼしていたのが印象に残っている。
「Yさん、夕方にでもお訪ねしますよ ・・・ 」
「有難う、待っています。」 節目がちなその人の
笑顔が浮かん来た。
外の雨脚が少し強くなってきた、隣の庭の樹木が風に
煽られる、小鳥のさえずりさえも聞こえない。
風雨を防ぐ ねぐらはあるのかな ?
あの橋の袂で見かけた、足を痛めている野良犬は、
大丈夫かな? 何処かでうずくまっているのだろう。
リ-ン ・・・
「Sくん ! ・・・」 あるお寺の気心の合う住職
縁談話である・・・
忙しくなるな、 次の段取りを想定していた。
雨に思い 雨を偲ぶ 人皆懐かしき