悲しきアピール 思い出の彼方に
いつのことだったかな ?
ある会社のある部門に数名の事務員さんがいた、
私のところへは二人のうら若き乙女が来ていた、
それも、月に1~2度だったように記憶する。
女心は分からない、そしていじらしい !
もてない男によりに依って二人とも好意を寄せた?
それがそもそもの想定外 ?
仕事のお礼を兼ねて、その内、野暮ったい無口な
女性の方に声をかけた、
「お茶でもご一緒にどうですか ?」
初めは、恥ずかしそうにしていたが、仕事に支障が
あっても困ると察したのかおずおずと承諾した。
徐々に記憶が蘇ってくる・・・
土曜日の商店街は、夏の土曜夜市が始まったばかり、
彼女は会社のひけた午後6時、商店街の中心部に在る
名曲喫茶にやって来た。
昼間の事務服から地味なワンピースに変わっていた、
日頃のおとなしい性格がその服装にも現れていた。
たわいもない話しと日頃の労をねぎらったのである、
普段、仕事以外は、無駄口を叩く女性ではないが ?
夜市の賑わいに誘発され店内の若い男女の語らいに
安堵したのか彼女は饒舌に自分の事を語ってくれた、
母一人 娘一人の淋しい家庭環境だった、父は彼女が
小学校へ上がる前に病気で亡くなっていた。
一時間が経過して客足が増えた!ウエイトレスさんの
動きが慌ただしくなったのでお開きする事にした、
店を出ると彼女は何度も振り返って、会釈を返した。
後日、もう一人の事務員さんが仕事でやって来た、
二人の内の一人だけ誘っては不都合だと思っていた
矢先だった。
少し変だなと思っていて、ふっと気がついた !
彼女の着ているものが何時もと違う ?
やや派手な服装だったのである、それも私服で !
女性に疎い男に女心は分からない、あとから我が社の
事務員に指摘されて気がついた。
「社長 ! 女性に差別、えこひいきはダメですよ ?
平等に扱ってあげないと ! ヒガミますよ ?
そう云う私だって・・・? 」
そう言うと彼女は慌てて顔をそむけた !
顔が紅く紅潮していた !
( ああ! 女心ってそう云うものなんだ ?)
もちろん私は差別が嫌い、別の土曜日を選んで
もう一人の事務員さんを誘った、
今度は名曲喫茶と違い若者向きのカフェーラウンジ
彼女との会話は内緒にしておくが固いサラリーマン
家庭の子女、上に独身の姉がいた。
派手やかな見かけによらず、健気な女の子だった。
そうだった ?
もう一人気を使う、否使ってあげなければならない
女性がいた、・・・「そう云う私だって !」
はにかんだ当社自慢の美人オフィスレディさん ?
彼女だけは、外でのデートは御法度 !
感謝を込めて美味しいケーキをそっと卓上に忍ばせた、
「これでごめんよ!」
むせるような夏が、終わろうとしていた・・・
男の本当の失恋が其処に来ていた、女心は分からない?