恒例の朝の散歩に我が家のCCと手を携えて家を出た、雨上がりの河川はほどよく水の流れを速めていた。
土手で出会う人々との挨拶は気持ちの良いリズムで奏でられる、犬と散歩の人とは立ち止まって世間話、単独でマラソン、ジョギングの人とはすれ違いながらの挨拶、毎朝一定のリズムで時が過ぎていく。
その日、グレ-の四国犬を連れた40才ぐらいの男は通常の人とは違っていた、心なし気難しげな表情で挨拶も硬く表情をくずさなかった、余裕のない男に私は違和感を覚えた。
300m下流で彼は、河川中州に下りて浅い水の流れを対岸に向った、不思議な行動を取る、渡り終えると今度は上流に向って犬を急き立てる。
一匹の犬が盛んに吠えて、その注意を拡散するような動きを見せた ?男は上流の橋げたの下に立ち止まって何かを覗き込んでいる ?
しまった!子犬がいるのだ ?男は確認のため犬を隠れ蓑に連れてやって来たのである。
私の悪い予感は2日後現実となる、近所の奥さんが2人土手で立ち話中だった「Sさん、市の職員が網を持って来て子犬を3匹捕獲して連れて帰りましたよ、可哀想に、大きな犬は3~4匹逃げましたけど ?」
先日の男の身分が判明した、地元住民にも挨拶できない市の職員は、職務とはいえどうなんだろう ?
犬をせき立てての不思議な行動は、野良犬の確認と捕獲の準備 !この市は以前から動物愛護に程遠い市として知られている、元市会議員、地区役員が棒を持って犬を追い回して叩くという噂が出た程である。
日々動物愛護に手を差し伸べる方々の苦労が偲ばれる、理解得られぬと知りながら弱者救済にいそしむ、犬を毛嫌う人の罵声を浴びながらも弱きものにと目を向ける。
それにしてもこの母犬は、前から気になっていた ( ダメだよ!そんなに吠えては、それでは子犬の居場所を知らせているようなものだ ?)
数年前に私と向きあった悲しい表情の白い雑種犬が居た、私は彼女を白ちゃんと呼んでいたが、見かけないので亡くなったのだろう、しかし、彼女の遺伝子をくんだと思われる犬達を河原で見かける。
その白い犬達の表情は、あの白ちゃんと同じ、遠いところから私を見る、けして吠えないのである、吠えることは見つかること、捕獲されること、母親の悲しみの歴史がその子供達の保身の術として受け継がれている。
だから泣きたくても鳴かない !
「白ちゃん! 白ちゃん!」 この呼び声は30年前別れを余儀なくされた愛犬スコッチに行き着く、白ちゃん&スコッチとの呼びかけなのである。
人間と犬との関係、私にとっての家族、肉親、かけがえのない大切なもの。
遠くから私に視線をあわせる彼や彼女達、地獄にも良い人がいるんだよ、
どんな形か分からないが、彼らがこの世からあの世に向かう時、この世は追い立てる鬼ばかりではなく、良い人もいたと思ってくれるなら・・・
「彼らのためにすくわれる !?」