シルエット
抜けだるい陽気の元、一仕事終えた私は駐車場で一息入れていた。土木会社の重機が暑さに音を上げるように喘いでいる、車を乗り降りする人もうんざりの態で汗を拭っていた。
時計は正午を指している、風邪気味なのに私は夏の装いに着替えた、袖先の露わになった腕が爽やかな風に酔いしれる、気持ちがいい!
ぼんやりと周囲の風景を追う私の目に、何かが動くのが見えた ?それは、爽やかに躍動している、少年が何事か動いている姿形だ!
見たことのある白い半袖シャツの少年の横顔 ?
手には古くなったグローブとボールが握られてブロック塀にむけて投げられていた。
小学5~6年生かと思っていたが3~4年生のような気がして来た、暑い陽射しも気にならぬようにブロック塀に向かって投げている、一人で遊ぶボール投げ、相手はいないのかい ?
その横顔を見て私はハッとした ! 長男のTの姿だった、どうしてここに、どうして今頃 ? 幼き日の我が子の姿がそこに在った、何と淋しそうなんだろう ?
しかし、それ以上の表情はうかがい知れない、
それも、やがて動きを止めて、片手で帽子を脱いでこちらを向いた、そして、にっこり笑うとペコンと頭を下げたのである。
「ありがとう! お父さん !」彼の口元はそのように語っていた、日頃、会話の少ない親子である、私は、親として尽くしてやれなかった過去を引きずる男。
頬に涙が落ちた、目尻を濡らす我が悔恨の涙、苦労かけたもんな !
突然!クラックションが鳴った! 工事現場のトラックだった、昼休みを終えた社員が午後の仕事に戻ったのである。
「ああ! 悪い、」慌てて我が車を動かせた、ふっと我に帰って先ほどの息子の姿を追った !
あの陰際のブロック塀に誰もいなかった、息子のシルエットは消えていた、
午後の陽だまり、私は思わず辺りを見渡した、静まり返った駐車場に、5月の陽射しが降り注いでいた。
親と子のキャッチボール、後悔に胸痛む息子のキャッチボール、
シルエットは息子のそんな想いを伝えていた !?
杉の子さん。
息子たちが幼かった頃、仕事が忙しく、ほとんど遊んでやれませんでした。
昔のアルバムを見る時、後悔の念に駆られます。
ご長男のシルエットには、そんな私の思いと重なるものがありました。
切ないですね・・・。
onecat01さん、
何気なく指先が数年前の我がブログを呼び起こしました、
返信コメントを失礼していたことにも気がつきました、お詫び申し上げます。
人々の想いを残して歴史が通り過ぎて行きます、私の日々も社会の変動に
揉まれながら過ぎて行きます。
息子のシルエット、親として残してやれなかった「楽しい思い出」のひとコマを
お天道様がファンタジーで見せて下さったのだと思うことにしております。
親父にキャチボールして貰えなかった息子も家庭を持って幸せに暮らしています、
しかし、男の子がいないので相変わらず一人で壁に向かってキャチボール ?
現代は親子の情愛が気薄になり家庭内暴力の悲しい事件が後を絶ちません、
日本よどこへ行く、
子供の息子達とキャッチボールできる日を楽しみに、頑張りましょう。