竜二 と 英二
金子正次の竜二が惜しまれて去ってからどれ程の時間が経過したか、
愛媛県松山市津和地 (旧 愛媛県温泉郡中島町津和地島) 静かに凪ぐ島は正次が生まれた故郷。
正次の面影を追いながら中島トライアスロンの島として全国に知られて来た。青い海と何処までも続く空が、この世で遣り残した正次を悼んで竜二を呼ぶ。
世間の評判は酷評だが、私は長渕 剛の英二に竜二を重ね、竜二を想う、喧嘩ひとつ、けり方ひとつで野次が飛ぶ、いいじゃないか、よたよた蹴りでも、そこに竜二が現われれば涙のひとつも出ると云うものだ ?
世界の北野 北野監督のヤクザ・バイオレンス映画の怖さと違って、金子の映画は、本物ヤクザが郷愁を感じる映画のような気がしてならない。
吉本の千原兄弟ジュニアが事ある度に竜二を語る、その惚れ具合は、彼に竜二漫談をやらせたら新境地を開くのではないかと思わせるほどである。
バ-ゲン売り場で順番を待つ「まり子とアヤ」 竜二の眼に涙が流れた、あの切なさが愛しくて、こうして竜二を追いかける、だから長渕 英二にお礼を言いたくて彼の肩を持つ。
世間は物真似の時代、竜二が英二に代ろうと俺は嬉しいぜ ! 英二の所作が、英二の啖呵に、竜二の叫びが聞こえて来る。
三津浜港を見下ろす小高い丘久万ノ台に金子正次が通った松山聖陵高等学校が在る、幾多の若者達が芸能の世界に、運動、体育会系の道へと進んでいる。
名を成し、又は無名のままに、それぞれの苦難の道を突き進んでいる、金子正次の遣り残した遺産を、形は違えども掴もうと孤軍奮闘している。
ある日の午後 「Sさん、時間ないですか ?」
正次が語った津和地の方言が、懐かしさを伴って耳に響いてきた、映画 竜二の 名セリフを髣髴させるイントネ-ション、潮の香りが鼻に匂う !
電話の主は、金子正次の生い立ちを語り、彼を本名で呼んだ、正次に連なる物静かな紳士、かけがえのない盟友その人である。