人間は物事に熱中すると周囲が見えなくなる、
昨日もそうだった、場所は広いカフェのゆったりとした4人掛けの
テ-ブル・・・
協力を得るため同僚A先生とある依頼仕事の打ち合わせをしていた、
白熱の論議で大勢のお客さんのこと等、目にも耳にも入らない、
隣の席へ3人の紳士がやってきたのは気配で分かったが、気にもせず
議論を進めた。
約1時間の所要時間が終わり我々は立ち上がってレジ-に向かおうとした、
その時、隣の紳士の一人が立ち上がって私を塞ぐ格好になった、
「先生 S先生 !」 と呼びながら抱きついてきた、
その時、彼が何者かわかった、我が町のいや我が県では名前の知れた名士、
B氏だった。
有る事で、いささか疎遠になっていた人、有る問題で迷惑をおかけした人、
有る事でとばっちり受けた者同士、ふたりの笑顔がはじけた。
二人は大人気なく?ハグしながら耳元で語る言葉で以心伝心全てが氷解した。
まじめは、誠は、いつかはわかりあえるもの、ぐっと我慢の一文字が
実る時が来たということである。
珍しく多弁を控えて、いいたいことを我慢して、飲み込んだ日々だったが、
氷解と和解の季節が到来した。
無言実行の身上だが、事と次第では有言実行に代わる私である、
Sは、信義を重んじる男、義理を果たす男、このポリシ-は変わらない。
その季節が其処に来ている。
再会を約して希望を託されて、ざわめくカフェを後にした、
同行のA先生は、その酸いも甘いも噛み分けた、煩悶の茨道を見守って
くれた烈士でもある。
午後のキラメク陽光が頭上に降り注いだ、 眩しかった。
一章は終わった、新たな二章の始まりと、あの時遣り残した宿題が大きく
前進する確証を感じさせられた。
重苦しい現実からの逃避、これを頑なに拒むところに解決策が見つかる、
耐えることは、耐えさせること、絶望は希望への序曲、誠の道に真実は有る。
A先生とのお茶会は楽しい、
疑心暗鬼とは無縁の真実一路がここにある。
いつかは変わる、いつかは実る、陽光がさんさんと降り注ぎ始めた、 午後。