妹よ !
忘却の彼方に消えたはずの女性が突然目の前に現れた、私が密かに大切に記憶に留めていた女性である。
異性としての存在とはかけ離れた女性 「妹よ !」私が青春真っ只中、二十歳の頃に出逢った女性だった、彼女は当時中学生、従兄の事業を手伝う私に2人の姉妹は目の前にいた。
お姉さんは従兄の会社の事務員さん、事情のある淋しい家庭環境だった、大人しい控えめな女性で、私とは同じ年齢も有って女性に弱い私だったが無邪気な会話を交わした。
姉と違って妹は活発な負けず嫌い、小憎らしい言葉をぽんぽん投げて来た、男同士空手に熱中していた私は苦手な部類の女性だった。
ところが、大人しい姉に比べて妹はもてた、中学を出ると医療関係の道へ進む、ナイチンゲールである。
私と彼女の奇妙な関係が生まれる「兄と妹」 不思議な感性だった、私の通称は男だけにしか使わない田舎言葉である、ところが彼女は人前でも自然にその通称で呼んだ !
勤め先の関係で男同士の揉め事に彼女は折々関わることになる、「Sやん!Aさんが昨夜殴られて・・・よ !」
「よし分かったすぐ行くから待っとけ !」
気性のアッサリした性格はとにかくもてた、挙句には三角関係の仲裁までやらされる羽目になる、当時の私は少しばかり知られた存在だったので時々お鉢が回って来た、いわば有名税である。
今をときめく、ある流派の空手の師範のお姉さんは彼女の学友だった、よくぞ、男の揉め事に行き当たったものである、彼女のサッパリ系の為せる技、まさに妹よ! だった。
そんな彼女の前に気の優しい男性が現れて妹は妻と言う名の椅子に座る、夫婦2人で店にも顔を出してくれたが、忙しい店だった為、ゆっくり接待してやれなかった。
私の松山転居と貧乏の始まりで彼女達ばかりでなく多くの顧客との別れが来ていた、
次回へ続く