40年の積み重ね、この年月は涙涙の連続だった、諦めに伴う失望感と屈辱の月日、抗しきれない想いに男の心は千々に乱れた。
その苦労に耐えられたのは空手で養われた裂帛の気合と男の友情、彼はそれで持ちこたえたのである、
人様から請われて相談に乗るこの今、万感の思いで過去を振り返っている。
親孝行の思いが仇になった年月でもあった、その悲しみは胸の底に納めて男は笑顔を見せている、お天道様だけは裏切らない、この信念で耐え続けた人生だった。
他人との諍いは別れればそれで軽減する、されど、再び言うされど、肉親との軋轢は男の心を切り刻んだ、もう良い、もう済んだこと、そう思うようになるには日々の繰り返しに耐えるしかなかったのである。
人は、自分とは別の思考を持って生まれて来た、この達観に至るには幾たびかの涙が必要だったのである、金持の前にはあっという間に人が集まる、お金に窮すると人は知らぬ間に離れて行った。
しかしこうしてゆく年を振り返ると大切なことを忘れていたことに気がつく、控えめに、そして陰ながら、この不幸な男をその家族を見続けていた人がいた事実を !
不幸の淵に咲く花🌸 物言わぬ花々と草木がじっと見つめて居たことを、
生かされる幸せ、失わなかった人生、それに踏みとどまった男の純情は、一編のドラマーと言えよう !
「わしは、崖っぷちに立つと強いぞ !」
心通わせる友に出る彼の言葉である、その通り、普通の人ならとうの昔に命を絶っていた、それを踏み止まった男の気迫に乾杯 !
だから、人様の人生相談に乗る男の言葉は当事者達の胸を打つ。
「明るいあなたが、そんな苦労をした人には見えません !」相談者が一様に語る言葉である。
雲間からお日様が顔を出すこの薄曇りの陽気の元、男の休息がある、40年前、故郷を離れた男が最初にたどり着いた町、その小さなコンビニの駐車場で男は佇んでいた。
( あの時は、ありがとう ! 路頭に迷ってよく足を運びました、お陰様で乗り越えることができました、有難うございました !)
「助けられて嬉しかったら、今度は泣いている人、困っている人に手を差し伸べなさい !」
師匠のお天道様のお言葉である。
男は初心を忘れない為、最初に足を踏み入れた町を時々訪ねる、胸をつく哀愁を自分の目と心で確かめる、
愛犬の死を嘆いた貧乏長屋、そこは撤去されて新しい住宅が建っていた、街角の風景が男の心を揺さぶる、人情紙風船 ! それでも人の情が欲しかった、そして耐え続けた。
自分だけいい思いをすると思うな、困った人をけして見捨てるな !
柔らかな陽光が、暖かく照らしていた、幸せな日曜日に感謝 !?