リアス式海岸 半島へ
十分な時間的余裕を持って我が家を出発したはずなのに、城下町に着いたのが予定時間の約2時間弱前、早く着き過ぎた。
ところが・・・ ?
目的地迄は其処から10分の所要時間だと予想していたのに、この地方特有のリアス式海岸に阻まれて、なんと着いたのがAM10:40、友の告別式は故人への花をたむける場面だった。
家族の心のこもった化粧で優しい寝顔を見せていた、せめて間に合ったことが救いだった、彼の行く末をずっと気にかけていた母親にそっくりの彼がそこにいた。
彼が大学を卒業して故郷の寺に帰ってからの付き合いは今日まで続いた、家内とは幼馴染だった、それだけに心打ち解けた時間を過ごしたのである。
終いの寺は、港町で育った彼には予想もつかない人里離れた寒村に在った、私は、車を走らせながら彼の胸中を思って泣いていた、
寂しいところに追いやったのではないかと ?
彼の寺での告別式を済ませて、斎場に向かった、親族だけの時間が流れた、そこで妻と後継住職に成長した長男から同じ言葉を聞くことになる。
「農業と漁業で成り立つ村の人たちは良い人ばかりで、夫を父を優しく迎えてくれた」
酒好きの住職の彼を家族同然にその席に誘って心を開陳してくれた。
「幸せでした !」
この言葉を聞くとは、私の心が晴れて行くのを感じた、(有り難いなァ !)
彼の家族と再会を約して別れて、風光明媚なリアス式海岸を引き返した、ここは、私の祖母の故郷、半島の裏側、なんと形容の仕様もない感覚に陥っていた。
「バァバ !」斎場に向かう前、広場に車で待っていた人は、その村の人だった、ご夫妻と話が弾んだ、人様との縁、一人では生きられない人間の宿命、日本人はもう一度廃れた人間愛! 祖国愛を取り戻す必要がある。
どの写真を見ても記憶に残る場面でも生前の彼は淋しさを湛えていた、慈愛に満ちた母の懐に抱かれたのか、彼の寝顔にその淋しい表情はない、永遠の安堵、やすらぎ、彼の人生の旅は終わった。
「Kっちゃん !そちらに行く時は一升瓶提げて行くよ ! 待っててよ !」
宇和島湾が 青く輝いていた !?