「Sさん、S先生! お金は寂しがりやだから可愛がってあげてよ。」
新緑が目にしみる郊外へ出向いた折、女性のA会長が笑いながら呟いた。
「そうなんですか ?」 車中の深々とした座席からそのように答えた。
「それと綺麗好きだから、いつも家をきれいにしておくのよ」
漠然と分かっていたつもりだが直接お金持ちから言われると真実味がある、
だからと言って今更大慌てで掃除するのもどうかなと、「まあ!いいや!」
しばらく金銭哲学、お金にまつわる小話が出て大笑いの道中となった。
この人は、どこにでもいる普通の主婦然、一見農村に見かける農婦さん?
ところが金融機関の人たちがもみ手でお出迎えの大金持ち。
お金は、陰気くさい家が大嫌い、いつも明るくワッ八ッハッの家が大好き
ゆっくりしたいのに トイレが汚れていると、ぷっと脹れる我が儘さん ?
お友達のお札さんが居ない家は、さびしいからと言って寄り付かない、
にぎやかにお金同士が騒いでいる家に入り込む、
「一緒に遊んで、仲間に入れて・・・」
笑いすぎて車が谷底へ落ちそうになる、だが落ちそうで落ちないウルトラ
運転手さん、この人は好かれている人か嫌われ人(びと)か、どっちかな?
詮索はやめて会長の話に戻りましょう、
「タンス預金はやめなさい、見るからに日陰のおめかけさんでは可哀想
それに息苦しくてお金さんが逃げちゃうよ・・・」
お金の声に 耳を澄ませてあげて 耳を済ませて聞くんだよ。
「笑う角には福来る」
そのせいかどうか会長さんの家には野良犬、野良猫が押し駆ける、
お金の匂いで嗅覚の発達した犬達がわんさと押し寄せるのだろうと近所
隣の噂である。
「会長さん、会長さんのつめの垢、煎じて飲んでも良いですか ?」
私は笑いをこらえながら会長の顔を覗き込んだ ・・・
「Sさん、だめだめ 駄目よ! それはだめ ?」
会長、珍しいことに目を伏せて、身体をもじもじしてごじゃる ?
乙女のような、ぽっと赤くなった、手元を見ると赤いハンカチじゃなかった
真っ赤なマネキュアが目に飛び込んできた。
韓〇ドラマ-に嵌った会長さん、寄り付いて離れない可愛い札束たちと
一週間後羽田空港から飛び立とうとしている。
「駄目よ、だめだめ ・・・?」
あなた次第で ウェルカム、おいで おいで に代わります。
これだから、お金さんに惚れられる筈ですね。
金儲けの秘訣、分かりましたか ?
駄目よ だめだめ この恥じらいの中に有ったのです、納得。
駄目よ駄目駄目! あなためがけてまっしぐら・・・お金さんがね。
お金の声に 耳を澄ませて その想いを 聞いてあげて下さい。