「ゴルフに使うお金ぐらい我々のメンバーで使ってやるから !」
50代前後の社長達は私にそう言ってゴルフを進めてくれた、
片山町高級料亭◯力の御馴染み社長達は寄るたびにそう言った。その町で社長、医師と言えばエスタブリッシュメント、そのお供が出来るということはその仲間に入るということ、これだけで経営は安定し見上げる人達の輪に入れることになる。
しかし、私の頑固な意思は翻ることはなかった、それは父母への想い、酒と賭け事はご法度! わが家の歴史にそれは根ざしていた、生活の安定よりも賭け事に身を崩す愚を頑なに避けたのである。
おとなしい性格の私だったが、人に恥じる生き方だけは拒絶した、その他の誘惑にも乗らない我慢さは友人達でも理解できなかった、
誘惑には女性問題もあったが、私独自の姿勢が確固として有った。据え膳食わぬは男の恥、私は常に損をしていた、女性の名誉の為に私は固有名詞を出さない、噂話は百花楼蘭、独り歩きしていた、真実は一つ、男と女の胸の内、2人だけの秘密を守れる男だった。
今振り返ると随分損をした、それはこの世での話だけ、悠久の命を考えると私は来世に余分に貯金をしている、徳という名の積立貯金。
飛ぶ取落す海運会社の社長の横で肝胆相照す企業群の社長が静かに笑っていた、現国会議員の父上の若かりし頃の姿である。
私の自慢 それらの人々とは別に生活に追われた人達も我が店に顔を出してくれた、その悩みを聞き、及ばずながらのお手伝い、私のロマンがここに有った、人を容姿や位で区別しない! 仏の心で臨む心情 !
片山町の夕日は、40歳に満たない男に、人生とは何かを教えてくれた。
近づくあの世への道・・・ 教えを受けた多くの先達 緒先輩、そして師匠たち、私のリタ-ンはここから始まる、
社長! ゴルフ、お供致します、マージャンも夜の宴席も必ず側でお仕えいたします、何なりとお申し付けを !
生前、薫陶を受けた方々である、私の人生の指南番、無粋で常識の掛けた青二才をよくぞ指導いただいたものである、感謝しきれない。
仕事の殻を脱ぎ捨てることの出来る素に戻った私です、恩返し、恩送りを心がけたい、そのように考えると案外あの世は素晴らしいのでは。
私の本当の青春があの世で、黄泉の国で地獄の閻魔大王のお墨付きを得て始まる、天空からお天道様が微笑んでいる。
「良くやった !?」