重苦しい灰色の雲が空一面を覆っている、運命は情け容赦なく人の前に立ちふさがる、昨日、一本の電話が日常の歩みを狂わせた。
「Aの行方が分からない、捜索願を出してます」予想もしなかった連絡が入ってモノクロの世界に暗転した。
ああ!これはただ事ではない、土日と楽しみにしていた予定をキャンセルして先方にお断りの連絡を入れた。
慌ただしい時間と宿命が刻み始めた、私を囲む親族にとって61~62の数は運命の数値 !今回もこの魔力から逃げることができなかった。
振り払って逃げれたのは、ここにいる私 S だけ !ガン病棟からの生還、奇跡に近い生命力だった。
「見つかりました・・・」
趣味のカメラ行脚が彼の運命を決定づけた、思いもよらぬ場所で彼の生命力は力付きていた。
私は今、慌ただしさの中で宿命に向き合っている、人の死、肉親の死ほど胸を切り刻むものはない、61は、田舎の風習では62歳、あまりに若い年齢だ。
彼のカメラは死の直前の被写体を残していた、検視を済ませた警察の見解だった。
その視線の先に彼は何を見たのであろうか ?その孤独が愛しく哀れでならない。
伊方原発から鷹が飛来する峠は人間には難所、野鳥の宝庫、そんな絶壁が彼を招き寄せたのである。
安らかな死に顔だった、ラグビーに打ち込んだ高校時代、大学は外国語を専攻した、結婚式での友人のスピーチはイスパニア語、青春が凝縮された祝福だった。
因みに一切自分の事は自慢しなかった男だが、英語、イスパニア語はペラペラ、ジャミ線、カメラ等趣味は多義に渡ったことを友人達の証言によって知らされた。
幸せの先取り、その結婚生活は長くは続かなかった、苦渋の離婚を経て彼の人生は故郷に腰を下ろした。
みかん栽培に情熱を燃やした男は今、静かに幕を引いた。
ラグビーW杯、日本対サモア戦、興奮冷めやらぬその直後、「ラグビーは最高、これぞ格闘技 !」と連絡を入れた私に、 相槌を打った甥だった「高校時代ラグビーやってたから!」
これが最後の会話になった、お通夜 葬儀告別式と続く、
故郷の秋は涙も枯れ果てる、 辛いね !?
鷹がさざえ岳を目指して青空を滑空する、
その先には望遠鏡を構えた指揮者が待っていた、
人間と鷹との絆、揺るぎもない高みにいる、
ここから先は運命の領域に委ねることになる。
何と言えば、良いのでしょう。
人生模様ですね。青春を満喫し、伸びやかに空を舞う鷹のように生き、そして突然の離婚。
故郷へ戻り、カメラ片手に野鳥を追う日々。
凝縮された人生を、貴方のブログが、届けてくれました。厳粛な気持ちで拝読し、貴方のお気持ちを察しています。ご冥福をお祈りいたします。
onecato1さん、
昨夜、コメントに気がつきませんでした、
人は自分を前に出す人と、常に控える人がいます、
生前、甥が語った言葉は、これからの私に勇気をもたらすでしょう。
闘魂と慈愛の心を併せ持った男でした、天国で恩人たちと涙の再会を
果している事でしょう。
青空、鳥たち、そしてラグビー、
彼の生き様は大いなる示唆を与えてくれます。
コメントに感謝致します。