男たちの挽歌 強者たちの哀歌 (エレジー)
私は数多くの人と出会いを迎えて来たが、ある感慨を込めて思い出している。
もう既に亡くなった人の方が多いが、その過程を振り返るとある現象が見える。
用心深い人と無鉄砲な人、楽天的と悲観的、その傾向と混じり具合で人生の織りなす綾が見えて来る。
生かしてやりたかった奴、こんな奴が長生きして? 人生は何と矛盾したものかと思わないでもない。
昔から短気は損気というが、そんな奴ほど早死にする、「とうとう死んだか?」と死を祝福される人は稀有だが、いたのである。
そんな先達を私は2人鮮明に記憶の底に覚えている、ヤクザ上がりの金貸し、彼に関わる親族をよく知るだけに複雑な思いを持たざるを得ない。
もう1人は事業家、彼は貧農の次男三男育ち、若くしてもう独特の金銭感覚の持ち主だったが、2人とも壮年に金持ちの地位に上り詰めた。
ヤクザ上がりの死はその晩、町の飲み屋から歓声が上がった、貸した側、借りた側も証文なし、強面ゆえに賃貸借契約を結んでいなかった。
取り立ての厳しかった貸主の死は、借りた側の無罪放免として歓喜されたのである、人が死んで祝杯とは ?
事業家の身辺には様々な予兆が見られるようになった、人生の黄昏、その死は思いもよらぬ形で訪れた、その死を悼み悲しむ人は家族のみという皮肉に彼の不幸がある。
事業拡大を成し、成功したとはいえ、余りに侘しい死であった。
肩を怒らせて道の真ん中を我が物顔で歩く伊達男 !
その町には数多くいた、虐げられた運命を呪い、弱き者にぶつけた、私とは相容れぬ面々だが商売の為我慢を強いられた。
それでも私は相手に理解を示して、良い関係を築いた、というより合わせたということである。
だが理不尽な要求には応じなかった、その点私は柔軟なようで意地っ張り! 彼らは渋々要求を引っ込めた。
平穏は彼らの日々にはマイナスで有る、乱世にこそ彼らの道筋は開ける、生活の乱れは身体にジワッと影響する、病が彼らの体を蝕んで行った。
「◯◯が死んだよ! 何年か前に亡くなったよ !」
故郷からの便りに男達の挽歌が聞こえてきた、彼らの切ない悲しみが私の脳裏に宿る。
「そうか ! 長生き出来なかったな !」
男たちの挽歌 ! 三崎半島の風車が物悲しく彼らの死を悼んでいる 「もっと他に生きる道が有っただろうに・・?」
人間は亡くなって金との関係が何なのか分かるようになる。
「あの世には持っていけない、生まれた時と同じ裸だもの!」
「お金に人生を左右されるなよ、腹八分目だぜ !」
男たちの挽歌 ! ツワモノ達の哀歌 (エレジー)
三崎半島の風車が、宇和海を見下ろして鳴いている !?