「S先生、引退を考えているのではないでしょうね ?」
彼は心なしか淋しげに聞いてきた、電話の向こうからだが!
「いや、そんなことはないですよ、大丈夫ですよ・・・」
そう云ったものの、本当は少しばかり考えないことはない、
やるべきことはやった、そんな思いを抱いているからである。
組織のトップに立ちたい、男だったら思うはずである、狙う
筈である、しかし、その基礎票があればの話である。
二通りの道がある、 そう方法ね・・・
1. 自分が立候補を決断できるだけの基礎票を持っているか。
(ある程度の支持者がいるか)
2. 実力のある者が後押ししてくれるか。
(票を沢山持っている支持者)。
どちらかでないとトップは狙えない。
意欲、欲望はあっても断念してきた者は数多い、
現に、私に再三再四 頭を下げた男が居る、誰々を一度でいい
会長にしてやってほしい ?
だが肝心の本人が決断できないで辞退したのでは話にならない、
その胸の内は、私が一番よく分かっている、彼の名誉のために
公言しない。
しかし、引退した今、遣り残した無念は胸の奥から消えまい、
男だったら踏み込むべきだった、たとえ負けても戦ったと云う
実績が男の勲章として残るのである。
やりたいのに踏み込めない自信のなさは、必ず後日後悔として
身を責める、何故 戦わなかったのか ? ・・・と。
我が身の弱さを責めることになる、決断できなかった報いである。
やっておけばよかった、何せ 組織のトップ争いなのである、
負けて敗退しても、戦ったと云う実績はみんなの記憶に残る。
会長選挙までやったのだ、トップの椅子を狙って正々堂々戦った、
この充足感が素晴らしい。
一握りの者しか戦う(味わう)ことの出来ないステ-ジなのだから、
だから私に未練はない、しかし、後継者育成はやり遂げる。
このまま下がることはない、今に見ておけよ男の心意気である。
そう言って電話で大笑いした !
「その気迫どこから出るのですか?」 と聞いてきた、「それは内緒
手の内は見せないよ ?」
男の美学としか言えない、今はね。
(命が続く限り、男のポリシ-は無くならんよ !)
金には気をつけよ、油断が身を滅ぼす、敵に塩を送る言葉である。
世の中は、素晴らしい、幸せの秤は人それぞれ、私の幸福感は
あなた方と、少し違うけどね、 まあ、ゆっくり行こうゆっくり ?