眼差し (まなざし)
眼差しというよりも射し込む眼といえば良いかな ?肌寒い1日が始まった、懇意な病院へ薬をもらいに出向いた、10人ほどの先客が全員マスク姿で神妙に順番を待っていた。
じっと凝視する人、素知らぬふりをする人、各人各様である、受付を済ませて椅子に腰を下ろして横を眺めた、 60代であろうか眼光鋭い御仁と目があった、と! 目が柔和になって会釈された。
コロナのせいで全員マスク、良いことも不自由なこともある ?眼光鋭い男といえば、数十年前のある男が思い出される、
その人の特徴は相対すると自分から視線を外さない、じっと見る、見るというよりも睨むという表現が当たっている、とにかくキツイ目だった。
親しくなってから聞いたことがある「なぜ!睨むように見るの?」想定外の問いかけだったのか、それでも「これが当たり前と思っているから !」相変わらず睨んでいるように私には見えた !
彼にとっては、会話の際視線を外すのは相手に対して失礼だと考えているようなのである、それを聞いて私は納得したが少し腑に落ちないでもなかった。
ところが思わぬ事で彼の一面を知る、彼は大企業の社員だったが普通の社員ではあり得ない態度を雲の上の人に取ってしまった、本人から聞いた私は上司も呆れた事だろうと苦笑を禁じ得なかった。
精神的に私とは少し違っていたのである、その目は、ウンそうか ?
それ以降、私は尚更相手を見つめなくなった、勿論視線を合わせるが自然体で外す、話す時は合わせる、これの繰り返し、だから私の目は優しいはずである。
たまにじっと相手を見るときは、怖いお人の場合である、どこから何が飛び出すか ? 身を守る本能から小心ゆえに反応する ?
私と相対する人の目は、皆さんおしなべて優しい目である、ところがたまにその目が語って来る 「Sさんは言葉もきついが 目もキツイ!」人妻さんになると 「どうにかしてよその目を、まるで痴漢もどきよ!」
「ええっ! そんなにひどいですか ?」と私は相手の目に問いかける ?
・・・
その時、「Sさん、シャツを着て・・・終わりましたよ !」病院の処置室、年配の看護師さんの声がする、院長先生その隣でニヤリ !「Sさん、年甲斐もなく何よ ?」と笑ってござる。
ベッドに横になってエコー検査、あまりの気持ちよさに、つい脳が散漫「バカね !」親しい病院でのひとコマ、年寄に免じてお許しを。
小雨に濡れる病院の樹木、降る雨悲し肌を刺す 「ああ! 寒い !」
しかし、からだの中には人の情が赤々と燃えていた、しあわせだなアァ !?