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思い出

レット・イット・ビー 追憶

ジャンバーの襟を立てても首元から師走の冷たい風が入り込んで来る、Aは「おお寒い!」と声を震わせた。

神社下の狭い裏通りの路面から枯葉を巻き上げた風が追い討ちをかける、並んで歩くB子のスカーフが後ろになびいた。

昭和41年12月、漁港も静まり返り、周辺のみかん山の採り入れも終わった、果実の収穫の終わった樹木が寒風に吹かれて悲鳴をあげていた。

町は正月気分に浮かれ、ジングルベルが商店街を活気づけていた、若い二人の暮れは、何事もなく過ぎようとしていた。

二人は商店街のハズレのスナック喫茶に足を向けた、夕食時が過ぎて飲屋街の喧騒がそこに来ていた、店内の客足は少なく2~3人の中年男性がカウンターに並んでいた。

カウンターの受話器のそばに小さなクリスマスツリーが添えられていた、B子はそっと触って微笑んだ「可愛いね !」

一番奥のボックス席に二人は腰を下ろした、Aはホットコーヒー、B子はレモンティーを頼んだ、

そこに流れてきたのが、ザ・ビートルズ、♪ レット・イット・ビー ? 演歌一筋のAは思わず耳を傾けた。

「ビートルズーの曲、私好きよ !」B子の声が弾んでいた、10代最後、19の冬真っ最中、年が明けたら二人は結婚を約束していた。

港町は、二人に希望の灯火を照らしていた、

しかし   ?

「おお!  寒い   !」Aのため息が現実になることを、その時二人は知る由もなかった。

運命は皮肉にも二人に別れ道を用意していたのである、イフ !  もし ?

♪ レット・イット・ビーは、悲しい別れのうた、帰らぬ運命の哀歌 ( エレジー )

B子の瞳から滂沱の涙が流れた、希望の灯火は二人の元から消えたのである。

月日は昭和から平成、そして令和に至った、その後の二人はそれぞれ家庭を持ち幸せな城を築いている、共通の友が、ふたりの運命に同情し見守ってくれたのである。

ザー・ビートルズの ♪ レット・イット・ビーは、数十年の歳月を経て、希望の歌に返り咲いた。

時々Aは、ひとり書斎で過去を懐かしみながら、この曲を聴いている           !?

Let It Be (Remastered 2009)

      ♪

The Long And Winding Road (Remastered 2009)

YouTubeでお聴きください。

「Sの交友録」 より。

・・・

ONE OK ROCK  の Taka に

この  ♪ レット・イット・ビー を唄わせたい、

新境地が開かれるだろう !


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