核の無力化 雷博士の挑戦
ここに不思議な男がいる、大多数の人々は雨の日よりも天気(晴れ)の日を好むが、この男は逆に曇り空、雨天を好むのである、何故だろうと思っていたが彼の話を聞いて納得する。
人は密かに彼をお天気博士と命名していたが、本当は雷を研究する雷博士、雨博士だったのである。
あの轟音、目をも射抜く稲光、我が家の犬は言うに及ばず人間達こそが恐れおののく悪魔の使い、お盆の花火大会で鳴ろうものなら毒舌吐いて罵ったものである。
「よりによってこんな日に雨を降らせるなんて ? 雷まで連れて来やがって、くそっ !」それ程までに忌み嫌われる雷 !
ところが反対に日照り続きの米どころに行くと、大歓迎、「雷さま、雨をお供にありがとうございます !」
そんな両極端の雷を寝ても覚めても研究する雷博士、そんな博士に日本政府は、ある相談を持ちかけたのである、 それは、平成の世も落ち着いた頃の春先のことだった。
その依頼、その研究は、人知れず極秘に発足した。
家族妻子にさえ秘密厳守の孤独との闘い、彼の愛国心と 使命感が苦難の道をも乗り越えさせるのである。
「日本の為、大和民族存続の為 !」
事実を隠し、他の研究との嘘偽りの元、各企業は協力した、外国から押し寄せる時代のうねり、脅しの風圧は、彼の使命感を更に高めさせた。
困難な研究は一進一退した、核保有国にインド、パキスタン等が仲間入りをした、
イスラエルについては既成の事実として世界は黙認した、そしてイラン、北朝鮮の保有が取りざたされるに至ったのである。
日本を取り巻く環境はこと程厳しくなったのである、憲法で手足をもがれた日本は独立国としての体をなしていない有り様だった。
国民のフラストレーションは止まることを知らない、その裏側で政府により限定された有識者達が秘密の会合を持ったのである。
日本と友好国の高原の砂漠に、日本人及び現地人混存の一団が密かに集結した、彼らは日本の自衛隊が装備する迎撃システムPAC-3の進化版狀のものを設置した。
それから数日して、無音の閃光が走った、それは砂漠全体に広がって元の風景に戻った、何だったのか ? それは音のない稲光 !
日本の政府中枢へある知らせが届いた、
「実験成功 ! 」
数十キロ離れた海上に粉塵が落ちて来た意味を知る者はいない。
数日して友好国の日刊紙に「ミサイル実験成功」と記事が小さく掲載されたが真剣に目を向ける国民は多くなかった。
「核の無力化」
その兵器は、雷博士の研究の賜物、連発の着弾をも防ぐことの出来る迎撃兵器だったのである。
敵国はその意図、仕組みを解き明かすことはできない、核ミサイル無力化兵器は、無言のまま、しかし、いつでもスタンバイで令和の世に控えている。
他のブログの文章に目が留まった・・・
「同じ考えの日本人がいる」
雷博士の目に涙が滲んだ。
苦難の行程に博士の頭髪は白髪に染まっていた。
コロナウイルスの猛威、気の重くなる世相に人々は身を縮める、
荒唐無稽、奇想天外の夢物語に一息ついてください、心の軽くなる勝手な思い、時には良いと思いますよ !?