たこ
品物を買ってレジーに立つと大柄な店員さんが迎えてくれた、大学生のバイトだろうか、落ち着いた装いの若者だった。
私の息子も学生時代コンビニでバイトをしていた、親父が苦労していた時代だったから、自分の身の回りは自分で稼いでいた。
私の頃は土方仕事のバイトだった、バイトと自転車長距離通学で足腰を鍛えることができた、武道の稽古には効果のある鍛錬法につながった、だから同時に入門した仲間よりも上達は早かった。
何事も経験させていた方が将来生きてくる、レジーの若者に目をやると、手の拳がたこで盛り上がっている、随分巻き藁、サンドバックを叩いているのだろう、左右両手ともタコができている !
この熱心さを社会に生かせてくれれば国の為にも有り難い !痛い思いをするということは、他者へのいたわりにつながる、叩いた拳の痛みを覚えておいて欲しい、いつか分かる時が来る。
若い時は、街中でバッティングする時もある、倒し倒され涙も飲む、何事も経験です、日本の夜明けの為には暗闇を手探りする事もある、今まさに日本は外圧にさらされている、頼むよお兄さん !
今年初頭、恋愛問題の相談を受けた青年がいる、せめて一年(本音はずっと続くことを願っているのだが) 空手を習いなさいと進めた若者である、
「分かりました、やります !」と彼は二宮師範の四国正道会館へ入門した。
身も心も強くなるから、女性が「頼もしい!」と寄って来るよと檄を飛ばしたのである、再会が待ち遠しい、逞しく成長している筈である。
いじめられっ子が、弱かった泣き虫が、辛い稽古に耐えて強くなる、空手の醍醐味でもある、長続きする者は、この劣等感を経験した者が多い。
人はいつかは体力が落ちる、それに伴い気持ちも萎える、しかし日々の鍛錬に培った頑張りは心の奥で生き続ける、将来の友も得る、
私の交友に占める武道家の割合は多い、終生の友にして師でもある。
この強い男たちが、涙を流す場面がある、それは人情話であり、惚れた女性が彼の元から去った時、男は少年のように涙を流した、
頼り甲斐があって逞しい勇者たち、実は細心な人情の持ち主でもある。
巻き藁に突き蹴りを打ち込む男達、か弱き女性を守る為に彼は必死に拳を鍛えている、たこはそんな彼らの勲章なのである。
男達に幸あれ ! その拳よ ! 永遠なれ !?