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雑談

杉の子酒場 男涙の子守唄

その夜は夕方から雪が降り始めた、
土曜日なのにこれでは暇だろうな、早くも前の道路が
白く薄化粧を始めていた。

酒屋のNさんも早めに注文取りに来て、氷屋のおやじさんも
3つだけ冷凍庫に入れて帰った。

厨房担当のCちゃんのカレ-の仕込みもいつもより少なめに、
M史は、カウンタ-の拭き掃除、Kは、ホ-ルに掃除機を
回していた。

紅一点、M恵ちゃんは彼らの仕事を手伝っていた、
午後6時、ふたりの老人が頬を紅くして入ってきた、仲良し
兄弟、Tの会長と助役さんである、私の後援会長にして親父。

杉の子、雪舞う夜の物語の始まりである、
あれは昭和が未だ輝いていた港町のひとこま、忘れられない夜に
なった・・・

杉の子酒場 男涙の子守唄・・・

さて ??

その夜は、珍しいことに会長さんたちは歩いて2分足らずの自宅へ
一旦帰ったが、9時ごろ再びある店の女将さんを連れてやって来た。

暇だと思っていた店内は一組 二組 三組と数人連れがひきも切らず
やってきてボックス席は満杯、10時ごろ私の弟が友達とやって来た。

酒が入るほどに歌が出る、弟がギタ-を小脇に抱えた・・・
その夜は、思いも寄らぬお客さんで賑わうことになった、
カラオケがまだない頃、弟編曲の♪ 俺と影法師の大合唱となった。

「1 花のふるさと 出た時は
    (ええ)出た時は
    はずんでいたっけ 影法師
    ・・・・・

男達は涙を流して声を張り上げた、
女達は、男って人は何っていい人なのと・・・嗚咽を漏らした、

会長兄弟も「マスタ-お前って奴は!」 目を赤くした。

感動の歌声はしんしんと降る雪を舞い上げて、八幡様の石段を
真っ白に染めた、街灯の灯が淡いホワイトカラ-に変化した。

♪ 俺と影法師 春日 八郎
 作詞:横井  弘
 作曲:鎌多 俊与

3 こんな男を 見捨てずに
   (ええ)見捨てずに
   かわいい奴だよ 影法師
   せめてお前と 二人して
   うずらなく里 ふるさとへ
   明日は帰ろう 帰ろうなぁ

あの夜の杉の子酒場は、そして物語の進行は、
人間の愛が素直に示された夜でもあった。
想い出は永遠に語り継がれる・・・

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