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雑談

夫婦ぜんざい お小夜の恩返し

「あんた! もしかしてこの娘 (こ) いいところの娘かしら ?」
女房のお絹が辺りに目をやって太平に呟いた。

年の暮れも押し迫って町全体が猫の手を借りたいような気配を
漂わせていた、冷たい風が吹いている、太平は身震いして咳をした。

数日前お絹が、店の格子戸に手をやって今にも倒れそうな息づかいを
している年のころ15~16才ぐらいの娘に気がついた。

肩を抱えて店の中に連れて入り熱いお茶を飲ませてやった、
色白な娘で言葉少なに小さな声で礼を言った、その仕草には育ちの
良さが滲み出ていた。

疲れがひどいのかそれとも親切に安堵したのか娘はそのままお絹の
身体に崩れた。

2階の小部屋に寝かせたが二日間死んだように眠った、3日目の朝
下で昼の準備をしているお絹に階段を下りる足音が聞こえてきた、
見上げるお絹に娘は恥ずかしそうに礼を言った「手間を掛けました」

太平とお絹は町のはずれに在る八幡神社の傍で小さな居酒屋を開いていた、
ほそぼそと真面目一筋商売に精を出していた、どうにか迷惑掛けない程に
店は繁盛していた。

店の裏手には幅1間ほどの小川が緩やかに湾曲しながら下流に流れている、
お絹が身元を聞いたが娘は答えなかった、「今は、堪忍してください ?」

「何か曰くがあるのだろうそっとしておやり ?」実直な太平はつぶやいた。

この娘を間に小さな物語が始まる・・・

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