歩き疲れた我が家のワンちゃん、後部座席で寝息を
立てている、長浜経由の海岸通りを車は軽快に走る、
車窓左手伊予灘に目をやった、
あれは何だ ?
濃いい濃紺の海が淡い色合いに変わった境目辺りが
何か変だ ?
30メートル程、衝立状の高さに盛り上がっている、
それが南北均等にせり上がっている、
ええっ! 私は思わず凝視した、まさか ?
普段の海と、それに覆いかぶさる様に盛り上がる海、
それが陸に向かって押し寄せてくる感覚 !
津波だ !
まさか ? まさか ? それにしても巨大な波だ !
しかし、よく見ると、目を凝らすと、波の動きは感じ
られない、せり上がったまま静止している、
陸に向かって押し寄せてくる兆候は見られなかった。
・・・ようやく気がついた、ああっ! 目の錯覚か ?
では何なのか ?
この海を見る度に思うこと、手前陸側と沖合との境目
は濃淡の差が際立っている、長時間運転をしていると
目の疲れが錯覚を引き起こすことに気がついた。
特に近年、この界隈の人たちに恐怖心を起こさせるのは
伊方原発の存在である、
再起動が了承されて地域住民の原発事故に対する危惧が
現実のものとなった事にある。
福島原発事故は原発安全神話を見事打ち砕いた、明日は
我が身が現実のものとなったのである。
私が生まれた村は、伊方原発の山を越えて南へ一直線
海を隔てて約10Km先に在る、
原発事故が起これば放射能はもろに村を覆う、
考えたくない事だが鎮守の杜に守られた歴史を刻んだ村は
半永久的に廃墟と化す。
♪ うさぎ おいし かの山 こぶな つりし かの川 ♪
童たちが無心に手に手をとったふるさとは、永遠に我らの
手から離れる。
原発事故の恐ろしさ、それは我が故郷の人々共通の想い
なのである、だから福島、その福島県民の悲しみが共感
できるのである。
私が学生時代を過ごしたK校は四国電力伊方原子力発電所
の在る佐田三崎半島の膝元に位置している、
♪ 波いくえ・・・ ♪
津波の恐怖、それは、原発に重大事故が起きる時、それが
錯覚だったら救われるが ?
しかし、現実のものになる時は、私たちの故郷が、手の届か
ない彼方に消えると云うことになる、
伊方原発には、故郷の住民の皆さんと私の親しい人たちが
生活の糧を得るために勤めている、その心愛しい。
愛しの故郷よ、穏やかな伊予灘よ、我が宇和海よ !
お願いだから、今の姿のままで凪いでいておくれ・・・!?
瞼に閉じる故郷なら、余りにも切ない。