車は峠を下り始めた、車の列が途切れること無く続いている、
伊予灘が開けて来た、海は白いさざ波を立てて打ち寄せていた。
宇和海に入り遠くに佐島が見える、戦中武器庫として利用され、
後世に語り継がれる日米戦闘機同士の空中戦が火花を散らした。
日本の戦闘機が米国の戦闘機を撃墜して市民は歓声を挙げたと
云う、その陰で私の父は機銃掃射を浴びて命拾いをしている。
その佐島の手前を白い船体のフェリーが南に向かって白波を蹴立
ていた、九州に進路を取っていた。
先般、ふるさとへ帰郷の折は、海原の濃淡が手前陸側と沖合とは、
色合いが違っていたが今回は手前が淡く、沖の方が濃く隔たって
いた。
季節によって目に入る風景の色合いが違って見える ?
自然は、無遠慮に四季の移ろいを見せて来る !
故郷Y市を過ぎて小さな集落に入った、
私をお兄さんと慕い可憐な花を咲かして二十歳で散ったKちゃんの
眠る小部落である、
海岸線に差し掛かった、左手の丘の中腹に目をやると墓地が見えて
来た、左側の窓を少し開けて私は声を高めた、
「Kちゃん! お兄さん頑張っているよ、いつか会える時がくれば
いろんなこと聞いてあげるから、安らかに眠って下さい。」
雨が心持ち激しく叩いた !?、 目の前の海が鳴いていた !?
竹馬の友の子息と友の妻が亡くなった、葬儀告別式を欠席した私は
胸のつかえが取れずに年末を迎えた、お焼香に伺うところである。
生まれ育った集落を過ぎ隣部落に入った、農協前で農協勤務の甥が
迎えてくれた、
帰り道から荒波の沖合を眺める、同級会の名前の源 かぶ島
沖のかぶ島、陸のかぶ島が灰色にけむる海の中に鎮座している。
同級生が苦労して植えた、松の木が逞しくその姿を見せている、
潮風と水不足にへこたれず生きる姿は神々しい、ああ!かぶ島よ !
小学校、中学校の校庭を右手に見て岬を回る、我が故郷が一望 !
みかんの採り入れの終った真網代、小網代、望郷の故郷である ?
先月亡くなった姉の仏壇に膝まずく、私をこよなく愛してくれた
唯一の理解者だった、まず、葬儀告別式の欠席を詫びた。
最後の訪問は3月に逝去した高校の同級生、久しぶりに仏壇に手を
合わせた、彼の妻が写真を出して来た、高校生の我々が写っている、
タオルを二枚詰めたやんちゃ坊主達が粋がっていた。
真ん中に小柄な、気取った学生が並んでいる、言わずと知れた男前
数十年前の私、おいおいもてないはずだよ ?
声を掛ける男の学生に、これじゃア! 女学生が逃げるはずだよ ?
何だよ! お前さん達は ?
冬の嵐が、遠い昔に引き戻していた、3・3かぶ島会 遥かなり !?