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雑談

母を乞うる詩  夕焼けが泣いていた

春なのに夏を思わせる青空が何処までも広がっている、

新緑の芽を吹く樹々が微風に揺らいでいる、木蔭に身を、
寄せる、砂漠で彷徨う旅人の気持ちとはこんなものか?

頬をなぶる微風が幸せ感を増幅させる、
幸せの裏表、不幸に苛まれる人の悲しみを思っていた!

その人は途方にくれていた、放蕩息子の所為で玄関先で
身を縮めていた、「すみません! すみません !」

私は、あるいきさつで海岸線から山深い山間の村へ車を
走らせた、断れない友人の頼みである男の借金を取りに
向かっていた。

目当ての百姓家は今にも崩れそうに傾いていた、辺りは
静寂が支配して過疎の村の哀しみを漂わせていた。

「ごめんください!」 何度か声をかけた?
「ハイ!」 60代と思うが70代に見える暗い表情の主婦が
奥から顔を出した。

要件を伝える私にその人は、身の置き場のない狼狽えようで
頭を下げた「息子は家を出たまま帰りません、手元にお金が
ないのです、すみません !」

勿論、私はサラ金の取り立てではない、非情な男でもない、
家の佇まい、母親の姿形を見ればどんな経済状態か分かる!

私の悪い癖だがこんな時に限って亡くなった母親を思い出す!
哀れなその人をどうして責められようか、私は踵を返した。

気の重い帰り道だった、我が母もこんな目にあったことは ?
胸に鉛の塊が、鼻先がツーンと・・・身を焦がす!

夕焼けがあんなにも切なく見えた事はない !

あれから、あの山路を通った事はない、二十数年が経過して、
あの時のお母さんはもう生きていないだろうと思う ?

貧乏に翻弄されて、立ち直れない息子に、生きる気力は萎えた
のではないか ?

あの日の夕焼けが、母親の命の鼓動の音と流れる血の哀しみを
表していた、「切なかったな!」

人生は、幸せよりも不幸の方が多い! これが人の世のさだめ
なのか ?

その息子と会う機会はなかった、何処の空の下で母を思うか ?
私のように母を乞うる詩を持っているだろうか ?

「母よ !」  後悔 先に立たず。

しのぶ 美空ひばり cover by karaokeZ
h hara さんの唄が夕焼け空から聴こえて来ました
母の愛は切ないけれど強い

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