花の番長 涙の宣言
風邪もだいぶ良くなった、大事な忘れ物を叶えに東へ向かう。
遠い日のことである、同級会の誘いにある男に電話した、ところが昼間だと言うのに酔っ払っている、「何だ昼間から酒など飲みやがって ?」不謹慎だ !
ところが相手の話を聞いて合点がいった! 脳梗塞の後遺症だったのである、それも重い。
その数日後、私は彼の元を訪ねた、彼から聞いていた住宅団地に着くと杖をついた初老の男が立って待っていた。
高校2年で3年生さえ畏怖し、当たるを幸い鉄拳制裁、その被害者は両の手で足りない程の数に登った。
私がかろうじて難を逃れたのは彼と野球部で一緒の同郷のMのおかげだった、それがなかったら当に1発食らっていた筈である。
彼のK高 制覇 !
番長の道は修学旅行の普通科の出しゃばりで頓挫する、日頃から普通科を思い切りビビらせたツケが普通科の勇み足で露と消えた、不思議な因縁である。
他校に喧嘩を吹っ掛けながらボクシングのコワモテの登場で尻尾を巻いた普通科の面々! Jも抗する術もなく退散した! 番長の野望が泡と消えたのである。
取って代わったのがMとYのコンビ、 歴史に残る名番長の登場であった、何より同級生、後輩達の自由な校風が約束されたからである。
歴史にもしもがあれば、上記Jが番長に座っていたら校内はその1年間最悪の校内生活になったであろう。
旅行を契機にJの存在は胡散霧散した、孤独な卒業を余儀なくされた、その後 Jの交友は聞かれなくなった。
そんな時、彼を不憫に思い続けた私は同級会の連絡を入れたのである、彼との再会は、病に手足の不自由になった哀しい男との再会でもあった、
旅行以来付き合いの途絶えた大阪のMは無理だとしても、地元に
残ったYと空手自慢のKを誘って再度訪問する。
麗しい友情の場面は涙なくしては語れない、
後日、普通科の面々はSだからできた仲直りの仲裁だと称賛してくれた。
遠い思い出になった、そのJが亡くなって3年が経つ、妻と子供達の事が気になりながら今もって行けなかった私だ、ようやく、ようやく彼の仏前にひざまずく日がやって来た。
彼だけではない、共に学び共に遊んだ学友達が十数名旅立った! その報告と余生を生きる者達の近況を語って聞かせてやりたいと思っている !
あの箱根の旅先で普通課が突っかけた他校への喧嘩だった、心の準備をする間もなく駆けつけたJたちに相手は想定外の強敵だった、ボクシングの強豪校のつわもの達が揃っていた。
逃げたのが悪いとしても彼1人を責めることはできない、Jにとっての不運、私はそのように彼を擁護する、番長宣言は私のJへのはなむけである。
私の宣言に異議を唱える者はいない。「Sよ!お前の好きにしろ !」
J・Nは 高らかに番長宣言したものの運命の悪戯で頓挫した不幸な幻番長 ! 私は、私の独断と偏見で彼の仏前にそっと宣言する、
「J よ ! お前さんも花の番長の仲間だぜ ! 川高の自慢の番長なんだよ !?」
校庭のヒマラヤ杉が亡き友を偲んで梢を揺らす、「川高サブロク会に感謝 ! そして乾杯 !」
青春回帰は ポエムを語り ドリ-ム & ファンタジ-を 馳せる、子供達の未来につなぐこと。
あいつ~男の友情
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