夜の町へようこそ、
賑やかな表通りより薄汚い裏通りが私はお気に入りだった。今振り返ると23歳のころ珍しく従兄弟と夜の町へ繰り出した。
目当ては新川沿いの角に在るバ-A、飲み屋街から外れた場所に在るのに何故か繁盛していた。
ママさんの力量と若い女の子を揃えた繁盛する条件を兼ね揃えた経営手腕に負うところが多かった。
気風の良い接待と酔客を裁く器量は抜群だった、その当時の夜の町では1~2を争うやり手ママの繁盛店と自他共に認めていた。
宵の口、それでも店内は若い客で、もう出来上がっていた、美人ホステスを目当てに押し寄せていたのである。
その当時、私は女がダメな純情派、口も利けないダメ男、もてる筈がない、
ところが不思議なものでそれから2年後、喫茶店をオ-プンするとその店のナンバ-ワンホステスに言い寄られることになる、若い者達だけでなく金の有る経営者達も目当てに通う可愛い系だった。
しかし私は誘惑を辛うじて辞退する、勿体無いほどの良い娘だった、理由はいろいろあるが、志が普通の商売人と違っていたからである。
話は、バ-Aに戻る、入店してビ-ルを注文して飲んでいたが右奥のボックス席に3~4人のダンプのドライバ-さんたちが飲んでいた、もう既に出来上がっているようだ ?
その中に田舎の2級先輩がいたので頭を下げた、ところが男の酒は分からない ?
その中の兄貴株が立ち上がった、私がガンをつけたと云うのである当然、先輩は止めに入った、何事か言いくるめている「分かった!」
お兄さんは何が分かったのか ? 「困ったね、先輩の連れともめる訳にはいかないものね ?」私の目つきが悪い! ガンを付けた ? と云うのである。
当時の私は、師匠に鍛えられている最中、どうしても目が据わって獲物を狙う狼の目になっていた、いわば職業病 ?
先輩のとりなしで仲直りとなったが、私の変わったところは、逆に気に入れられて声を掛けられるのである、その人は3つ年上の気の良いお兄さんだった。
それから何処で出会っても男が惚れるような笑顔を見せてくれる、その道では名の売れた9ちゃん先輩との出会いの一席である。
風雪は、人間の装いを替える、名物ママはその後有名なスポ-ツ選手の母として世に知られるようになる。
夜の町、飲み屋街に咲く、男と女の物語は、喜怒哀楽を織り成して止ることはない。
望郷八幡浜、青春のひとこま、町は装いを替えながら、しぶとく明日に向うのである。