何で ?
仕事に出る為車のドアを開けて運転席に座った、
うしろのガラス窓を少し下げた、
ガラス窓の下に何か動くものがある、
ちっちゃな数センチのカエルがドアに挟まって
喘いでいる、
(ああ! これは、大変だ!)
慌てて車を降りた、
ガラス窓が上げ下げする隙間にカエルの足が
挟まって出る事が出来ない、
「何てこった! 」
という事は昨夜から挟まっている事になる、
「可哀想に!」
私は用心しながらガラス窓をゆっくり上げ下げ
した、だが、挟まった足は抜けない。
ガラス窓下の黒いゴムの部分をテコで押しながら、
そっとカエルの体を引いた、
(抜けた・・・)
カエルは14時間ほど挟まったままで喘いで
居た事になる、
人間に置き換えると何と残酷な事か、
私が身体を支える前にカエルは下の柔らかな
草のジュータンに落ちて前方に姿を隠した。
痛い思いをさせたが、良かった!
小さな命、人間から無視され続けるか弱き者達、
自然界は、大きなものから小さなものまで、
生きる為に涙ぐましい営みを続けている。
じっと見つめる黒い瞳、小さな息をする弱きもの、
私は、ふっと立ち止まって幸せな自分を想う。
この自然がいつまでも安泰でありますよう!
日本の明日を考えていた。
「おお~い! カエルさん、お母さんや兄弟に会えたかい」
「痛い、思いをさせてゴメンよ !」
何処からか、虫たちの合唱が聴こえてきた、
その中で、ひときわ高く聴こえる集団がいた、
あのカエルの仲間たちが、心を込めて、力いっぱい
ベートーヴェン 第9 合唱 『歓喜の歌』を
歌い上げていた。
「ありがとう! ありがとう!・・・」