先日に引き続いて畑の草刈りをしようと準備していたら、
懐かしい同郷の後輩から電話がかかってきた、
私が子供の時代から親しくしていた家の末っ子君だった。
特に彼の亡くなった長兄は私より4級下で、よく遊んだ
男だったが、若くして体を壊して病院で亡くなった。
親しい経営者の喫茶店を指定して落ち合うことになった、
彼は駐車場で待っていた、
10年以上会っていなかったので頭には白いものがちらほら
見えていた。
名の有る企業で頑張っている、笑顔の爽やかな男である、
マスターが静かな個室を用意してくれていた。
「A君、幾つになった?」
「ハイ、来年定年になります・・・」
彼は、兄二人、姉二人の末っ子、母親の面倒を最後まで
見て、母を先に亡くなっている父親の元へ見送った。
その彼の家の墓地は、私の父母と同じふるさとに在る。
話は多義に渡って終わることを知らなかったが彼の携帯は
彼を離さず頻繁にかかって来た。
関西の大学で知り合った四国の女性と結婚した、
長女は、航空産業の花形企業に就職して外国で出会った
企業戦士と結婚した。
関西のある都市で落ち着いた家庭を築いている、
一流企業に居た娘のお陰で外国旅行はフリーパスだった
ようである。
彼の小さな頃は村全体がそうであったが、とりわけ彼の
家は貧しかった、しかし、めげずに生きた人間は強い。
彼をマスターに紹介したが、既に彼は奥さんとこの店の
常連だったことが分かった、彼の答える表情が爽やかだった。
又逢いましょう、
亡くなったお母さんの仏壇に御焼香に伺いたいと思います。
A君、君にとって故郷はどんなところですか ?
彼の家は、現在他人のものになって、畑に姿を変えている、
ふるさとは遠きに在りて思うもの、童心の昔帰らずや !
店を後にする戸外は、さんさんと陽光が降っていた、
良い日だったね、思わぬプレゼントの一日でした。
私を可愛がってくれた彼のお母さんが黄泉の国から微笑んで
いるような気がしてならなかった。
見上げる空は、柔らかな陽射しと、たなびく雲の晴れ間を
見せて、昔を懐かしむように暖かく見守っているようだった。