渚にて
コロナに気を配りながら友への見舞いに車を走らせた、行きは、時間の都合で高速道を利用したが帰りは普通道伊予灘沿線を戻る、午後4時の景色は淡い空色に雲が覆いかぶさるも海面の色 薄淡く静かに凪を見せていた。
大きな手術をした友は今でも定期的に検査に通っている、一昨日三か月ぶりの検査も異常なし、元気な顔を見せてくれた。
若い頃の東京での大学生活は空手道部に所属して「暴れ馬」で呼ばれた剛の者(事情で通称は伏せる)、今では静かな佇まいで地元の人望を集めている。
彼のたたずまいは静寂の中にその一日を過ごしている、人の悩みに耳を傾けて、人のために尽くして来た彼の人生後半は静の人と言えるだろう。
私より少し若いが、若い頃の無鉄砲は影を潜め、読経の後ろ姿は尊厳さを見せる、どれほどの後輩たちが愛情のこもった鉄拳を浴びた事だろう。
形の違った「バシッ !」 暴れ馬は記憶に残る躾の男でもあった。
彼の兄弟と私は家族同然に育った、私が一番の年長者、家族のそれぞれ折々に私は相談を受けて来た、男 二十歳からの付き合いである、
先代住職夫婦から薫陶を受けた私は、そのご恩に無償の精神で臨んでいる、私なりの恩返しである。
この境内は私を育んでくれた私塾、寺子屋、共に痛い思いをして稽古に励んだ仲間は、各地へと飛び、それぞれの武道の道を進んでいる。
大学空手、少林寺拳法、合気道、中には柔道、剣道、そして弓道部へと夢を求めて向かっていった、男とは・仲間とはすばらしい結合体。
西の空に沈む太陽が各自のバックボーンとして輝いている。
港町に咲いた男の友情、帰り道の海岸通りに見る夕凪が青春のあの日を思い出させてくれた。
渚にて、
男の友情に乾杯である、・・・押忍 !?