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友情, 武道

黙祷

悲しい知らせがもたらされた、明るくて温厚なその人は一年余りの闘病生活の後、家族に看取られて永遠の旅に出た。

数年前、農地転用の相談があって事務所と現地を往復した、その目的も自己の損得でなく地元の友人知人、そして故郷の人々の為のものだった。

長い付き合いだったにもかかわらず、私が全く知らなかった特技を知ったのは皮肉にも一年前のこと、今回の知らせと同じ友からの報告、彼はT大空手道部卒、その片鱗も見せなかった。  

いずれ訪ねて語りたいと思っていただけにコロナの蔓延が憎い、今日の土曜日は彼の死を悼んで空も泣いている、雨雲を連れて。

人の死、人の運命、こんなに科学が発達してもより深く知る事は出来ない、予測は出来ても適切な対応が遅れる、もどかしさと悲しさ、彼が私たちに示してくれた人への愛情、振り返りたい。

もうひとつの土曜日は辛くて寂しいものになったが受け止めたい。

私達の若い頃は自分中心の世界、大人になるほどに、人との輪が広がっていった、いろんな知恵が知識がもたらされる、経験という学習と知識が修得される。

多くの人を知る事は、多くの誘惑に会うが、人生勉強も併せて得ることになる、食わず嫌いになるな、されど悪には染まるな !そのさじ加減は難しいが、踏み込んで体験するのも是人生。

身近な人の死が、我が身を責める、良き隣人であったか否や  ?良き友であり得たか  !

空手道談義、これほど心豊かにするものはない、自慢話にあらず、人助けの経験談、弱き者へ手を差し伸べるぐらい嬉しい事はない。

T大空手道部、あの「蒙古放浪歌」の本家本元である、心優しい益荒男は静かに天に召された、道着と黒帯はあの世へのお供にと、奥さんの心遣いを思う。

情の廃れた日本だが、笑顔絶やさぬ男は、大切なものを遺して私達の元から逝った。

慎んでご冥福をお祈り申し上げます。

黙祷

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