久しぶりにA医院のB院長を訪ねて診察を受ける、
待合室は毎度のことだがたくさんの患者さんで賑わっていた。
ほとんどお年寄りだから病気に悩むこともない、
だから人生に達観したようなもので、ぼんやりした人
居眠りしている人、隣さんと何事か家自慢でかしましい人、
ほほえましい待合所風景が奏でられている。
ここの医院は院長先生の言葉のイントネ-ションが緩やかで
ゆったりリズムだから患者さんも伝播して緊張する人が少ない。
いいんじゃない、良いってことよ、私の好みにぴったし。
院長婦人があっさりとした素晴らしい女性、手続きをお手伝い
してからのお付き合い、いつも優しい言葉を掛けて下さる。
人間は、この情に弱い、
だから私の行きつけのお医者さんである、大病院で聞かれると
真っ先にあげるのがこの行きつけのお医者さん、贔屓の医院だよ。
今日は、ピロリ菌について聞いてみた・・・
保険では・・・保険にしない場合には・・・こうですよ ?
院長先生と看護師さんの二重奏、呑気な私でも十分分かりました、
「考えてきます、相談してきます」「誰と・・・?」「山の神と」
診察室は大爆笑 ! 「Sさん、見えなかった? 今ピロリ菌が
窓から逃げて行ったよ!」
おどけた院長先生、吉本漫才師そのまま ? いいじゃない ?
「病院の名前を よしもと医院に代えようか?」 誰かの声がする、
「それとも松竹芸能医院かな?」 ???
又、耳の奥で声がする ? 誰だいお前さんは 思わず叫んだ !
「へい! 疫病神でさ あまりに明るいので退散するのよ・・・」
その後の院長先生の言った言葉がよかった ?
「おいおい? 居てくれんと困るぞな、疫病神が居てこそ繁盛する
ものを、逃げられたんでは患者が来ないぞな ?」
・・・ ・・・
なにやら呼ぶ声がする
「Sさん、お薬出来ましたよ・・・」 受付の事務員さんの声だった、
診察を済ませて待合所でテレビを見ていたら何時の間にか転寝をして
いた。
あたりに人の姿は誰も居なかった、「なあんだ 夢か ?」
小ぶりだった雨が 大降りになっていた。
午後のひととき
A医院の賑わいはどこにもなかった、静かな医院はテレビの音だけが
響いていた。
「年長組みのSちゃん、お母さんのお迎えまだですか ? 先生と
お遊戯して待ちましょうね ?」
小さな鐘の音が聞こえて来た、テレビで鐘の鳴る丘が放映されていた。
「鐘の鳴る丘」~とんがり帽子