お前に逢いたい
人間関係に飽きが来て、人恋しさなんかあるものか、なんて贅沢言う男がいる、しかし、それは強がり本当は人恋しくてたまらない。
「Sさん! 今度帰る時は前もって知らせてよ、昼間は山で畑仕事しているから夜電話してよ !」
大学空手で一世を風靡した男の言葉とは思えない、寄る年波でいささか感傷気味になっている、長い空白だったが、男同士の絆は、どうして、切れていなかった !
逆に都会で苦労しただけあって、素朴な性格を再確認したのだろう、こんな友情の形も素晴らしいと思う、若い時は血気に早って誤解も重ねたが、あの時結んだ縁は強いものだったのである。
もう一人の闘牛の町の友は「Sさん ! 早く来てよ ! 逢いたい!」身体を不自由しているから尚更恋しがる !
空手現役の頃は、全国大会出場のそうそうたる先輩が彼の自由組手には顔を青ざめたほどの鬼気迫る気迫の男だった、強かった。
腹部へ逆突きが入ろうと、、蹴りが股間にのめり込もうと、鬼の形相で向かった男である、病に倒れただけに尚もどかしいのだろう。
拳(コブシ)が縁の男たち ! 武道の道を邁進した男達 ! もし日本が侵略者に蹂躙されるならこんな男たちと一緒に!国のために戦いたい。
コロナの為、なかなか逢えない男がいる、闘病中で長らく逢っていない、大学空手強豪校の花の主将を務めた!伝統流派の名物師範の愛弟子、
先般の武道舘の鏡開きに引き合わせたい合気道の高段者がいるのだが体調不良で休んでいたため出来なかった。
「逢いたい !」彼もそう言って残念がってくれた、体育会系はいい !
フルコンの名師範も年賀状で思いを筆にしていた、高みに到達した名人達人、裂帛の気合いの男たちが、瞼の裏でわらっている。
ふるさと港町、フェリー波頭で蒙古放浪歌を朗々と歌う男二人 !
嫌なご時世だからこそ ! 無欲な男達が偲ばれる、損得抜きの男たち !
私利私欲から逃避して見ませんか ?
男には捨てられない義理がある、真っ当に、真摯に臨んで見ませんか !
金に換えられない宝物、男の友情、この日曜日、そんな男達とお茶会です。
逢いたい !?