空一杯青空が広がっているのに我が家には突風が吹きつける
今日故郷の町の友の霊前にご焼香に伺う、まるで友が遣り残した
無念を訴えているようである。
彼の信念、それはすごいものだった、しかし反面家庭的には
淋しい子供時代を反映して、家族を大切にした優しい男だった。
ある面での戦友であり、またある面では相容れなかった部分も
ないわけではなかったが、
しかし、それらを差し引いても大事な、心に響く同士でもあった。
恐れていた彼の死、とうとう別れがやって来て彼の霊前に向かう、
共に癌という悪魔に魅入られて共にそれと戦ってきた、
先に病った私がどうにか生き延びて、後から来た彼の矢が尽きた、
世の無情をこれほど感じていることはない。
女々しく悲しんではおれない、彼の分まで目を見開く責務を感じて
いる、ちょうど彼のライフワ-クだった世界が彼の意思・希望とは
逆の方向に進み始めた、彼の歯軋りが聞こえてくるようである。
「Sさん、悔しい! 無念です!」 彼の鼓動がこの突風になって
私の元へやって来たのかもしれない。
彼の霊前に向かう私は、40年に及ぶ彼との歴史に向き合いながら
紺碧の海を右に見ながらハンドルを握る、白い波頭を眺めながら、
彼の死に想いをはせる。
ふるさとは悲しみの中に沈んでいる、我が心 友に向かいて 泣く。。