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友情

男の世界 男の友情 送別会

男の世界 男の友情

もう随分 昔になった。

四畳半の部屋に男女7~8人だったと思うが集まった、
いや、待てよ 10人だったかな ?

八幡様の小さな石の鳥居、その横に 古びたボロアパ-ト
は建っていた。

膝小僧抱えた、男のひとり住まい・・・

昭和が光芒きらめいて、紅い夕日が片山町に差し込んでいた。

あれは、そう!
私の弟分 Z昌が和歌山へ発つ少し前のことだった、

ふたりの乙女が泣いた・・・
「男の友情って、すごい! 男の人って・・・?」
感激の余りすすり上げて泣いた・・・

・・・

男の友情  男の世界
女には、わからない 男の世界

紐解いて 見ましょうかね・・・

当時の八幡浜市には南予の有名進学校八幡浜高校と
新しく出来たばかりの八幡浜工業高校の二高が在った。

その中に、工業のI、八高のF、と謳われた2人の双璧がいた、
Iは、後日 極真会館芦原道場の第一期生として入門し初期の
芦原道場を支えた功労者である。

2人の性格はどちらかと言えば陰と陽、しかし2人は気が合った。

「Sさん、ワシ 和歌山へ行くよ!」 我がアパートにイソ浪の
F (Z昌) が唐突に言い出した、
「どこへ ?」 私の問いに・・・「S へ!」

一流企業のS金属工業和歌山製鉄所に就職が決まった、その経緯は
知る由もなかったが、曹洞宗の末寺の住職をしている父親の関係
ではなかったかと思う。

彼を慕う後輩達が音頭を取って我がボロアパートで送別会をする
事になった、 さて・・・?

主人公のF (Z昌)プロボクサ-K、KはFの和歌山行きに誘発されて
心機一転、京都のプロボクシングジムヘカムバックのため旅立つ事に
なる。

Fの一の弟分W、松山の私立高校、空手指導員の道を目指して日空協
で稽古に励むO、その他同級生と女友達の送別会だった。

ビ-ルでの乾杯! 熱のこもった激励でとうとうFの涙腺が緩んだ ?
「Sさん! 僕はやる! かならず頑張ってみせる!」それまで押さえて
いた気持ちが崩れ落ちた。

顔を紅くして充血した両の目から大粒の涙が溢れ出した・・・
それは、嗚咽と共に腹から搾り出す誓いの言葉に溶け込んだ。

周囲の友も貰い泣き「Z昌ちゃん頑張ってよ、身体に気をつけてぇな!」
狭いベニヤ板の四畳半が、感激に震えた。

乙女たちの嗚咽が大きくなった・・・
「男の友情って、すごい! 男の人って・・・?」後は言葉にならなかった。

歳月が流れて・・・
Zは数年前、会社の定年を少し前倒しして退職した、
「もう、金はいらんよ !」 豪快な言葉を残して製鉄所の門を去った。

会社のトップ、所長と掛け合い漫才をした、ス-さん とハマちゃんは 映画
そのままのサラリ-マン珍道中を終えて幕を閉じた。

他の社員が唖然とした異質な社員は、所長であろうがどんな偉いさんで有ろ
うと 頓着せず、欲得のない生き方を示してその門を去った。

しかし、彼が並の男でなかったことは、次の言葉に集約されている、
「Sさん、ワシはコンピューターにも負けない自信が有ったよ!」

製鉄所の大事な部門を担当していた、その仕事に関して誰にも負けない自負
を彼は持っていたのである。
実際は、その内容を教えてくれたのだが、あえてここには触れない。

上司やトップに率直にものをいい、他の社員が恐れ多くて言えない所長に
冗談を交わす天真爛漫、その性格は映画釣りバカ日誌のハマちゃんそのまま
である。

「Sさん、お父さんに言って聞かせてよ、もっと妻を大事にするように ?」
糟糠の妻、千切れかかった紅い糸をつなぎ止めたのがこの私・・・。
夫婦が帰郷の時、そう言って私に甘える妻が居る「そうかい よしよし ?」

Fに誘発されたKは関西プロボクシング界で世界ランカ-、日本チャンピオン
を育てて名伯楽として燦然とした地位を築いている。

「Sさんあの時の状況は全てカセットに録っていますよ聞かせてあげようか?」
帰郷の折、喫茶店で落ち合ったWは私に笑顔を見せて答えた。

片山町の夕日が、八幡様の木立に反射して、男達の挽歌をこだましていた。

「Zよ Kよ W公よ Oよ C三よ I よ そして・・・よ!
 あの日を けして忘れない・・・ ありがとう。」

男の世界 男の友情 男達の誓い さらば 送別会 !?

西田佐知子の “アカシアの雨がやむとき”

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