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海辺の村に咲いた花一厘 ファンタスティック

ファンタスティック
1. 非常にすばらしいさま・感動的、「・・・な光景」
2. 幻想的で、夢を見ているようなさま、「・・・な舞台効果」

戦後の焼け跡が日本の津々浦々で無残な姿を見せていた頃、小さな田舎の
小学校では入学式が執り行われた。

いわしを干す広場の前は沖に見える大島まで続く海原が広がり、台風とも
なればその海が陸に迫る勢いで盛り上がって押し寄せる。

海の怖さは、村落の住民こぞって知り尽くしていた、戦後間もない四国は
南国の一寒村の春のおと連れであった。

3月早生まれの私は、遅生まれ4~12月の同級生に比べると全てに於いて
劣り、特に体格が小さくて運動神経もからっきし駄目な子供だった。

250軒の小さな村落は、浦の谷、中の谷、姫田、狭古の4地区に区分け
されて私の家は海端の道路に接して建っていた、下狭古という地区だった。

台風の影響をもろに受けて特に高波は家の中にまで押し寄せてきた、だから
門には厚板を挟んで波をしのいでいたが、台風の都度お宮下の姉の嫁ぎ先へ
避難していた、台風は直接の脅威として我が人生に付いて回った。

本家が遠洋漁業の網元をしていた関係で後年漁船の遭難事故に直面する。
悲嘆のどん底に落とされる海難事故は歳月を重ねても癒されるものではない。

そんな田舎の有る年の春、我々は真穴小学校へ入学した、八十数名の同級生
竹組と松組に分けられた、まずこれが人生の分疑点、何故かと言うと6年生まで
組替えが行われない、1年から6年まで同じ友達と勉強することになるのである。

これが、血縁にも勝る本来の竹馬の友として終生続くことになった。
入学式の当日、私は家の前で隣の遊び友達と学校へ行く準備をしていた。

道路の北の方からひとりの新一年生とおぼしき女の子がお母さんに連れられて
やって来た、大きな目をした可愛らしい女の子だった、ふくよかな顔立ちは
育ちの良さを表していた。

「きれいな子だな ! まるでお姫様 ? みたい」子供心に胸がトキメイタ !?
同級生が愛情込めて羨望の眼差しで呼ぶ、Yちゃんとの初めての出逢いだった。

それはまるで山の上のお城から姫君様がにこやかに降りて来るような錯覚に陥ら
せるものだった、後々私は悪友に、お姫様の御降臨と噂した、勿論尊敬を込めて。

御伽の国の物語、少年に淡い恋心を抱かせるドリーム&ポエム、恋の芽生えでも
有った、 「早すぎないかい ?」

今振り返ると これこそ ファンタースティックと呼ぶに相応しい現象だった。
同級生の男子生徒憧れの的、お姫様Yちゃんとの初対面の思い出である。

「ファンタスティック」 
海辺の村に咲いた花一厘、彼女の波乱万丈の人生の幕開けはバラ色に彩られていた。

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