裾野からの便り 友は今
「そちらは、どうだい ?」
しわがれた声が受話器の向こうから聞こえて来た、
行き付けの歯科医院の治療が終わったばかりだった。
医院の玄関を出て車に乗って動き始めた時、道路脇に停車した、
あたりを見渡すと雨はやんでいた、
台風はどうだと言う、「こちらは大丈夫!」と答えた。
高校時代は柔道部に所属して小柄ながら闘志ある業師だったが、
明るい性格はクラスのみんなから慕われた。
家は漁師、私と同じ子沢山の家庭に育ったが暗い陰は微塵もない
生徒だった、こうして、何かあると心配して電話をくれる、
子供達は皆家庭を持ち独立している。
子供達が小学生の頃帰郷したことがあり、私も子供を連れて
出会ったがその時写した次男同士もすっかり成長した。
彼の次男はその時児童劇団に所属しており、アイドルに成長する
A嬢の相手役を勤めていた、その後、大歌手の子役時代を好演して
将来を期待されたが、本人の強い希望で別の道に進んでいる。
彼の妻は演歌界の大御所と縁があり、正月餅つきの時の歌手特性
の酒を送ってくれて大事にしまっていたが、飲食店の知人にさし
あげた、ちなみに、現政権の重鎮とは同郷で懇意な間柄である。
市井で静かに暮らす人々、その一面を見るだけではその背景は見え
ない、
昔お世話になった社長の息子は、今を時めく政界のサラブレッド。
自ら言わない限り分からない、だから知る由もない。
それで良いんです、陰で声援を送るのもひとつの生き方である。
都会に出て他郷の女性と縁があって結ばれた、その妻の良し悪しで
男の人生は左右される、内助の功かカカア天下か、あげまんンさげまん
さてどちらか ?
私の同級生、仲良し連中はほとんど亭主関白、では! 私は ?
男 ? 女房の手のひらの中、これが家庭円満の気がせんでもない!?
と言うところで次の予定が入りました、気がつくと風雨がやんでいた。