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雑談

良き時代の港町 杉の子界隈 想いで ぼろぼろ

港町は漁業とみかん景気に湧いていた、
一番賑やかな商店街の裏にその町の飲屋街はあった。
千代田町から東へ新町、その間に狭い通りを挟んで屋台が
両側に並んでいる、寿司屋、一杯飲み屋、バー、スナック、

それから少し東に行った狭い下道には、バー専門に10軒程
営業していた、宵の口ともなると化粧に着飾った夜の蝶、姐
さん達が艶めかしく歩いていた。

まず、素人さんの経営者は稀有な時代、だからよくある揉め
事も場慣れした経営者が難なく捌いていた、

夜回りが巾を利かしていた時代だった、その時期二十歳前後の
普通の青年に過ぎなかった私には未知な世界だった。

現在その町で名住職と言われるA住職がまだ高校生の頃で、
私が可愛がったその弟Bも高校二年生、空手のM先生に寒風吹き
荒ぶ愛染堂でしごかれていた時代の話である。

彼ら兄弟のお寺の近くに奇しくもその町で名前の売れたふたりの
お兄さんがいた、泣く子も黙る強面、名前を出すだけで揉め事が
治まる、兄さん達は結構なテリトリーを抱えていた。

まず長身のC兄ちゃん、そのCの息子DをBが可愛がっていた関係で
Bは家族同然だった、息子Dが私と同じ名前でもあって後年私の店へ
よく来るようになった。

C兄ちゃんは女房の居酒屋の屋号をなぞって◯◯のC兄ちゃんと通称で
呼ばれていたが胸の持病を抱えて長生きは出来なかった。

もう一人は、苗字の後にEっさんと語呂の良い名前で怖れられていた、
この人は、事業に才能のある人で、若い男女をたくさん抱えて商売を
繁盛させていた、躾は厳しいのに素人さん達が多く出入りしていた。

金持ち喧嘩せず、徐々に事業家として成功し男の世界から足を洗って
行った。

この二人は、後年私が店を持つと何度かお見えになったが周囲の友人
に知り合いが居た事で紳士的な振る舞いを崩さなかった。

今の時代と違って義理人情が幅を聞かせた時代で、遊び人と一般の人
が共存していた良き時代の終わりだったかも知れない。

店を始める前の私は、彼ら遊び人との接点は皆無で、店を経営する
ようになってから否応無く彼らの世界と接点が出来るようになった。
恫喝、ゆすり、哀願を装った芝居、様々な誘惑に晒される事になる。

気の弱いものは長らく続けられない私と後2人だけ素人から始めたが
それ以外は殆んど、玄人筋が水商売を生業にしていた。

アル中、その他危険な誘惑に引き釣り込まれる、強い意志がないと
脆くも崩れることになる、健康を壊し夜逃げ同然に失踪する者もいた。

こうして振り返るとあの頃がまるで陽炎のように青空に吸い込まれる?
時代の趨勢は渡世人が住めない時代を迎えたのである。

杉の子界隈 想いで ぼろぼろ ・・・

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