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雑談

男達の挽歌 滂沱の涙 瑞 よ !

闘い終えて 日が暮れて 友よ
女っけなしの我が青春は、男同士の野暮で日が暮れた、
今にも倒れそうなベニヤ板の簡易アパ-トは神社下に在った。

前面道路は土埃の未舗装と来て、雨の日は泥水がズボンの裾に
飛び散った、
そこから少し南へ出ると商店街の東端にあって買い物客が引けも
切らなかった。

昭和の残り火がまだ遠くに有って無茶な青春が燃え盛っていた、
私のアパ-トは二十歳前後の若者達で賑わった。

弟分 瑞が和歌山へ旅立つ少し前、彼の後輩、その彼女達数名が
集まった、瑞の送別会をすることになった。

缶ビ-ルとオツマミ、そしてお茶菓子、瑞の都会への晴れの旅立ち、
Y高で名前を売った硬派、しかし女にはめっきり純情な男だった。

数名の乙女は後輩達の彼女、みんな顔馴染み、ずい〇さんと呼ばれて
いた、面倒見の良い兄貴分である。

実家はお寺、兄は東京の大学空手道部の猛者、大学院、本山で修行
中の身だった。

元来明るい男だが、さすが後輩たちが「瑞〇君頑張ってよ !」と
口々に言うものだから、酒には弱い上に更に感情が高ぶってきた、
とうとう耐えていた感情が切れたのである。

彼とは兄弟のように接して来た私だったが、こんなに涙を流す彼を
見たことはなかった、男 瑞〇 滂沱の涙となったのである。

「Sさん、頑張るから ! がんばるから !」
畳に座って、みんな輪になって、肩を組んでの絶叫と為った。

「男の友情とは何と素敵なの!」女性達は泣き崩れた。

その時の状況を瑞の一番の弟分Wが録音していたと後から知らされたが
未だに聞いた事はない、あの時の面々が再度再会してみんなで聞きたい
ものだと楽しみにしている。

瑞〇 日本の大手企業を無事定年退職、和歌山で終の棲家を構えている、

映画 釣りバカ日誌は、彼と会社トップの日常を真似たのではないかと
私は思っている。

弟分Wは大学生活を終えると帰郷、地元有力土木会社に就職して重要な
役職を務めて数年前事故もなく定年を迎えた。

彼らは、空手、少林寺拳法を学んだ礼節の男に昇華した、
無茶な青春から静の社会人としてそれぞれの道を究めている。

「Sさん、もう金は要らんよ !」 実父の法事に帰郷の折、私に語った
瑞〇、表に見えない苦労を重ねたことは、私はよく分かっている、

「Sさん、お父さんに・・・・・言って聞かせてよ ?」切れ掛かった
ふたりの縁を結んだのがこの私なのです、あの時の乙女が其処に居た。

女達にはわからない男の修羅場、喧嘩という名の修業の場、男達の挽歌、
港町の夕日にあの日が蘇える「Sさん、がんばるから !」
瑞〇よ! お前は私の誇りだ !?

小林 旭の ♪ さすらい しみじみと聴いてみる。
♪ さすらい 小林旭
詞:西沢 爽
曲:狛林正一

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